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「どこにもいないよ」 Somewhere They Can't Find Me

 この歌は「水曜日の朝、午前三時」と共に語るつもりでした。なぜなら、タイトルと曲調が違うものの、詩がサビの部分を除きほぼ同じだからです。
 
 ポールが加えた詩は、歌の後半サビの部分
 
 But I've got to
 でも僕は
 Creep down the alley way,
 細道をこっそり進み
 Fly down the highway
 公道を飛び越え
 Before the come to catch me
 彼らが僕を捕まえに来る前に
 I'll be gone
 いかなきゃ
 Somewhere they can't find me
 どこか見つからない場所へ
 
 罪を犯した逃亡者の心情が生々しいですね。アクション映画的に豪快に逃げるのではなく、泥棒のようにコソコソ歩くという表現もおもしろい。
   歌は3コーラスあり、各コーラス共前半は、「水曜日の朝、午前三時」の詩(2コーラス目は省かれています)を少しアレンジし、後半に上の6行を使っています。
  
 曲調は、ブルースのようなロックのような、テンポののりがよく味のあるものです。特にサビの I'll be gone の部分の和音が、S&Gにしては珍しい変則和音なところも新鮮ですし、その絶叫の後、急に声量を落とし、They can't find meと 歌うのも、対照的でおもしろい。
 
 なぜ同じ詩を別の曲調で使用したのかについては謎です。
 当時、アルバム制作にわずかの時間しかかけられなかった状況から推測するとコード進行を先に決め、すでにある詩を少しアレンジすることで、即席ラーメン的に作ったのではないかと。これ私の想像です。
 
 それにコード進行が、「どこにもいないよ」の次の収録曲「アンジー」に似ている事も気になります。前奏部分は、まさに「アンジー」の前奏と同じ。ギターだけの前奏の後、少し音程が下がっているベース音(厳密にいえば音が合っていない)が唐突に入り、ドラムや金管楽器が加わる伴奏は、「サウンド・オブ・サイレンス」の録音(後で別トラックに楽器を追加する)方式ですから、ますます怪しいですね。
 
 タイトル「どこにもいないよ」については以前書いた通り、英語タイトルとも違い作品のイメージから考えるとふさわしくないので今からでも何とかして欲しいものです。でも、既にファンには馴染み深いタイトルでもありますので、このままでもいいかな?

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