updated on 20 SEP 2004

シューベルト ピアノソナタ 第20番

−−−−−人には音楽を聞く動機がいろいろある。気晴らし、リラックス、思い出、活力、愛、怒り、悲しみ、人恋しさ、やすらぎ。元気になりたくて聞く音楽。今日仕事で失敗して、上司からこっぴどく怒られた。得意先から大クレームで右往左往した。ひどいテスト結果だった。友達と喧嘩した。恋人にふられた。そんな時は明日の活力が沸く曲を聞きたい。一方、家族や友達にも恵まれ、何も不満のない毎日を送っているけれど、なんとなく孤独を感じている人もいるだろう。
いや人はみんな孤独だ。自分は他人にはなれないし、他人も自分にはなれない。なぜなら本当の心は自分の中にしかないからだ。だから寂しさを寂しさとして感じるられる人こそ、人の愛を大きくうけとめられるはずだ。孤独をぐっとかかみしめる時に聞く音楽。なんだか知らないけどうきうきした気持ち。説明できないのだけれど、楽しい気持ち。
そんな時に心に流れる音楽。シューベルトの「ピアノソナタ第20番」はこうした人間十人十色の感情にぴったりのソナタである。
躍動的で力強い始まり、メロディや和音の合間に半音階を装飾的にちりばめた印象的な第一楽章。知らぬ間に活力がみなぎってくる。
黄昏の一人散歩のように、悲しげな第二楽章。寂しさをぐっとかみしめ、静かに聞きたい。そして孤独を孤独として受け止めたい。
妖精が氷上で踊るような軽やかなワルツの第三楽章。説明できないけどなんとなく楽しく軽やかな気持ちになってくる。
そしてまるで歌曲のような親しみやすいメロディを高らかに歌い上げる第四楽章。繰り返し繰り返し奏でられるメロディはさりげなく、でも心にずんずんと響き頭の中にずっと残る。不思議だ。とても優しい気持ち、そして元気な気持ちになってくる。
シューベルトは短い生涯で21のピアノソナタを書き残した。ベートーヴェンをお手本にしたといわれるが、どうだろう。未完成作品も多く、ピアノソナタで完成したのは15曲だという。第20番は最後から2番目のソナタだ。19、20、21番は作品番号でも続き連作となっている。なぜ立て続けにピアノのソナタを書いたのか?その説明は音楽専門書に任せることにするが、私は19番に比べ、20番がとても明るく、躍動感溢れていることに興味を感じる。
31歳というあまりに若い年齢でこの世を去ったシューベルトにとって、以後の活躍を予感させる作品であり、シューベルトがシューベルトであることを強烈に示す作品でもある。第四楽章には少しくどい変奏部分が多いと個人的には感じるが、それも割り引いていいだけのスケールと魅力がこのソナタには、ある!バックハウスというドイツのピアニストも最後の演奏会でシューベルトの「楽興の時」を弾いている。シューベルトのピアノソナタをもっと聞いてみたくなった、、。

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