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スカボロー・フェア/詠唱 Scarborough Fair/Canticle

 誰もが知るサイモン&ガーファンクル定番の歌。映画「卒業」で、主人公のダスティ・ホフマン演ずるベンジャミンが赤いスポーツカーを乗り回す時にバックに流れた曲として有名だ。
 
 前奏からすでにこの歌がもつ美しさが満ち溢れている。神秘的和音のアコースティックギターによるアルペジオ。バックのチェンバロのようなキーボードの効果も絶妙だ。
 
 メインのメロディラインはイギリス民謡を借用したそうだ。研究好きのアートが図書館から見つけてきたという。独特の雰囲気に引きこまれる。
 
 アコースティックギターの前奏。確か7フレットにカポタスト(ギターの基準音を調整するツール)を付け、Am(半音7つ上昇し実音はEmとなる)を基本に弾く。変則和音なので、通常の弾き方ではないが、弾けるようになると嬉しかったのを覚えている。ポールのギターフレーズは何度聞いてもいい。
 
 ガーファンクルの歌声がとてもマッチした歌。他の歌手にこの雰囲気は出せない。
 
  スカボロー市場へ行くのなら
  パセリ、セージ、ローズマリー、タイム(が並ぶ市場)
  そこに住むある人に告げてください、私を覚えていてと
  あの人は私の真の恋人だったのです
  
  木綿のシャツを縫ってくれと伝えてください
    詠唱:深い森の緑の中にある丘の上
  パセリ、セージ、ローズマリー、タイム
       
  縫い目も針のあともないシャツを
  そうすればあの人は真の恋人になる
  
  1エーカーの土地を探してくれと伝えてください
  パセリ、セージ、ローズマリー、タイム
  海水の間の波打ち際の土地を
  そうすればあの人は真の恋人になる

  皮の鎌で収穫しろと伝えてください
  パセリ、セージ、ローズマリー、タイム
  そしてヒースの束に集めてくれと
  そうすればあの人は真の恋人になる
 
 私が好きなのは、第2部分から併唱(こんな日本語ないかな?)するポールの「詠唱」。これ、「ポールサイモン・ソングブック」(サイモンがイギリス滞在時に、録音した彼の作品集アルバム。今は絶版になっているらしく、ファンにはたまらない逸品。)の中の一作品から使っている曲らしい
 のですが、味があっていいですね。兵士に「殺せ!」と命令する指揮官、
 とショッキングな歌詞が込められているので、平常心で聞くのは難しいけど、
 メイン曲と見事にフィットしていませんか。
 
 パセリ、セージ、ローズマリー、タイム。いずれも香辛料の名前ですが、なんで香辛料の名前なのか、何か深い意味がそこに隠されているのではないか、とずっと考えていましたが、市場の雰囲気の表現(香辛料が立ち並ぶ様子から、市場を連想しませんか?)に使ったのかもしれません。
 (料理で、この香辛料をどれだけ使いましたか? 私は、パセリ、セージ、タイムまで、ローズマリーは使ったことがありません)
 
 スカボロー市場へ行ったら昔恋人だったあの女(人)に、伝えてくれ、という内容が4コーラス分続きます。あれをしてくれこれをしてくれ、と昔の恋人に指図する。
 
 今考えると、これは、戦場に死にに行く兵士が、かつての恋人のその後の生活が気がかりで、いろんなことを言い残す、伝える、歌なのかもしれません。
 
 ならば、裏の「詠唱」と見事に一体となっているの理由もうなずける。
 
 でも、何度もいいますが、美しい歌です。
 ボキャブラリーが乏しいと自分でも思うけれど、「美しい」、ただそれしか表現しようがない歌です。

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