Song, Paul Simon ソング・ポール・サイモン

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      SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン

         Vol.33  2003年7月12日(土)

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サイモン&ガーファンクル グレイテストヒッツ 1972年

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このアルバムの目玉はなんといってもライブ版の収録でした。それまで私は
彼らのライブを全く聞く経験がなかったのです。それがわずか4曲とはいえ、
入っている。たぶん多くのファンはこの4曲を聞くためこのアルバムを買っ
たに違いありません。

アルバムの宣伝文句には「サイモン&ガーファンクル自信が選曲し、オリジナ
ル音源を新たに編集し全く新しいものに仕上げた」とあります。でもそのサウ
ンドを実感としたファンがどれだけいるか。私の耳が未熟なせいもあるでしょ
うが正直言って、「ああ、そうか」という程度の印象でした。色々な楽器や色
々な音楽を聞き、いわば「耳が肥えた」状態でないと違いはわからないですね。
「違いのわかる男」(このナレーション、わかる人は歳がばれます)ではなか
ったんです。やはり心奪われたのはライブでした。

【ミセス・ロビンソン】が最初の曲というのは、彼らのコンサートみたいでい
い。S&G後期のコンサートでは必ず第一曲目に演奏されたそうですから。ギ
ターだけの「ミセス・ロビンソン」を私は当時テレビで見た記憶があります。

続く【エミリー・エミリー】。これこそこのアルバム最高のプレゼント。圧巻
です。アルバム「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」版よりこちらのほ
うが数倍素晴らしい。アート・ガーファンクルの伸びやかな声。ポール・サイ
モンの見事な十二弦ギター。会場全部が、この二人の演奏に耳を澄まし、心を
ひとつにして聞いていた、そんな想像をするのです。アートの歌声の美しさを
今さらここでいうまでもありませんが、このライブでの声は圧巻です。そして
ポールのギターも圧巻。以前からS&Gは二人だけで完結できる希有なアーチ
ストと言い続けている私の言を証明する録音でしょう。

感動の渦の中、次は実に淡々と【ボクサー】が流れます。この語り口調と、自
然な流れの曲調が、詩にこめられている「生き様」みたいなものが強調される
のです。ポールのギター、そして間奏のトランペット(教会で録音)が染みて
きます。

再びライブ。話し声などが少し聞こえ、始まるのは【五十九番街橋の歌】。こ
れ本当に楽しそうで、この歌の雰囲気そのものです。二人のハーモニーも抜群。
特に最後の部分が絶妙です。ポールの遊ぶギターも最高。

重なるように【サウンド・オブ・サイレンス】が流れます。エレキバージョン
で、あのヒット曲と同じ。これを聞くとサイモン&ガーファンクル出世の原点
を思い出させてくれます。

目立たないけれどファンの間では秀作として親しまれている【アイ・アム・ア
・ロック】。これをA面最後にもってきたのは渋い演出です。コミュニケーシ
ョンを拒否する主人公の生き方、現代社会にも共通する鋭い視点はポールなら
ではのものです。

そして【スカボロー・フェア】。伝承音楽ということでアートが図書館で見つ
けてきた歌ですが、文字通り二人とプロデューサーの英知の結集でした。この
曲の裏の歌で、「サイド・オブ・ア・ヒル」というポールの作品を改変したも
のが加えられています(「サイド・オブ・ア・ヒル」については近々取りあげ
る予定の「ポール・サイモン・ソング・ブック」で詳しく述べます)。

さて、B面の一曲目にもってきたライブ版【早く家に帰りたい】。この曲も、
アルバムヴァージョンに比べ、素朴だけれどいい味が出ています。始まったと
たん拍手喝采が起きます。二人のハーモニーが冴えています。特にアートのバ
ックハーモニーがいい。

重なるように続く【明日に架ける橋】、そして【アメリカ】。この名曲につい
て余計なコメントは不要でしょう。

ライブ版最後の【キャシーの歌】は、この歌の持ち味を最も明確に伝
える演奏です。アルバムバージョンでも結局はポールのソロですしね。歌の内
容を考えると当然かもしれません。しみじみといい演奏ですね。

以後【コンドルは飛んでいく】【ブックエンド】【いとしのセシリア】につい
てもコメントは不要ですね。それにしても最後に「いとしのセシリア」を持っ
てきた意図は何だったんでしょう。この歌確かに秀作ですがまさかこれをトリ
に持ってくるなんて誰も想像できなかったでしょうね。意表をついてこういう
楽しげな歌をラストに持ってきたのは彼らの計算された意図だったのかも?



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