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SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン
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Vol.22 2003年4月20日(日)
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ライブ・サイモン Live Rhymin'
ポール・サイモン ライブアルバム 1974年
〜ポール・サイモンが歌う「明日に架ける橋」
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「ポール・サイモン」(1972年)そして「ひとりごと」(1973年)と、二
枚のオリジナルアルバムをリリースした翌年1974年に、ポールはなんとライ
ブアルバムを出します。収録曲は1973年のツアーにおける録音で構成されて
います。曲目は次の通りです。
1. 僕とフリオと校庭で Me And Julio Down By The Schoolyard
2. 早く家に帰りたい Homeward Bound
3. アメリカの歌 American Tune
4. コンドルは飛んでいく El Condor Pasa
5. ダンカン Duncun
6. ボクサー The Boxer
7. 母と子の絆 Mother and Child Reunion
8. サウンド・オブ・サイレンス The Sound Of Silence
9. ジーザス・イズ・アンンサー Jesus Is Answer(手元にあるCDが輸入
盤のため日本語名称不明)
10. 明日に架ける橋 Bridge Over Troubled Water
11. 母からの愛のように Loves Me Like A Rock
12. アメリカ America
どうですか? 曲名だけで「聞いてみたい!」って思いがわいてきませんか?
私自身はずっと聞いたことがなく、このメルマガを始める頃にアルバムを米国
から手に入れました。アナログレコード時代から店頭では見てはいましたが、
エルヴィス・プレスリーじゃあるまいし、白いスーツをまとったポール・サイ
モンが写っているジャケットに違和感があり、積極的に聞きたいとは思わなか
ったのです。
しかし、おなじみの中古CD店アンサンブルで御主人に紹介され、ポール・サ
イモンの1964年から1993年までの作品をピックアップしたボックスセット
を入手し、その中入っていた「ダンカン」のライヴバージョンに心奪われたん
です。
心奪われたのはもちろんポール・サイモンの(ライブの)ギター。ライブなの
に本当に完璧な演奏なので圧倒されました。また、ロスインカスとの演奏も、
いい音なのです! ということで、そくざにAmazonから輸入盤を国購入しま
した。
第一曲目の「僕とフリオと校庭で」。ポールのギター1本とポールの歌声。サ
イモン&ガーファンクルのライブを蘇らせてくれます。ポールの歌は、ポール
の歌声と彼のギターというしっかりとしたベースがあるから人の心をうつ、そ
う証明しています。それにしても見事なギターストローク!
「早く家に帰りたい」の前奏が始まるとすかさず大拍手。しみじみとした歌い
ぶりがいいですね。
優しい歌は続き「アメリカの歌」。これは完璧にストリングス抜きですがレコ
ードバージョンそのもの。むしろオリジナルバージョンを超える秀逸な演奏で
もあります。心打たれます、、。
それにしても「これ本当にライブ?」って疑ってしまいそうなほど演奏が完璧
で、しかも会場は静かに聞き入っています。こんなコンサートを聞けたら幸せ
です。
南米のグループでロス・インカスが加わりおなじみの「コンドルは飛んでい
く」が始まると割れんばかりの拍手。懐かしいチャランゴとケーナ(?)の音
色に心温まります。
「ダンカンの歌」後奏のケーナのソロでポールが 'Sing a song!' と思わずつ
ぶやくのが印象的です。まさにこのケーナが「ダンカン」のもうひとつの主
役、「歌」を歌っているのです。
なんと!「ボクサー」もロス・インカスと共に演奏します。一風変わった音色
になり楽しい。特にコブシ(ケーナのですよ)の入った「ライラライ」が面白
いですね。S&G版でトランペットとキーボードの音色による間奏だった部分
をクライマックスに持ってきます。ケーナの哀愁帯びた音色によるソロがいい!
★全く別の歌!!
アルバム前半はS&G時代の原点(というよりポール・サイモンの原点)のシ
ンプルな演奏、そしてウルバンバが加わっても、基本的にオリジナルに近い雰囲
気の演奏が続きました。
後半はゴスペルのコーラス・グループが加わり、オリジナルとは全く違う趣向
になります。全くイメージの違う「母と子の絆」にあっと驚いてしまいます。
あのどこか悲しげな歌も演奏の違いでこんな楽しい曲に変身するんですね。
ギターの前奏こそ同じでも「サウンド・オブ・サイレンス」もいきなり歌が
コーラス(これがゴスペル風か?)!S&G版による印象が強烈に残る(なに
しろS&Gバージョンは2種ありますが二人の歌とアコースティックギター部
分は同じ音源)われわれファンには少し違和感を感じるほどの変容ぶりです。
第3コーラスはしみじみとしながらも力強い男性シンガーのソロ。素晴らし
い!第4コーラスのポールのソロも男性シンガーばりに歌い込んでいます。こ
の演奏、別バージョンの「サウンド・オブ・サイレンス」として発表してもい
けそうですよ。
コーラス・グループによる「ジーザス・イズ・アンサー」。女性シンガーの
ダイナミックなソロが圧巻!これがゴスペルなんだなぁ。神を称える内容の歌
ということは、ミサ曲のような音楽でもあるわけです(少し強引な解釈?)
が、ゴスペルは聞いていて本当に拳を握りたくなるほど「力がみなぎって」き
ます。
そして、ついにポール・サイモンは「明日に架ける橋」を自ら歌います。ピア
ノの伴奏もなく、ギターと静かなキーボード、ドラム、ベース、そしてコーラ
スのバック。しかしコーラスが進むにつれてポールの歌にも熱がこもり、更に
コーラスが独特な彩りを加えていきます。最後I will ease your mind を何
度も繰り返すの印象的。このライブアルバムの中でも特に異色の演奏、しかも
最高!
ポールが口火を切りメンバーが一人一人「ラーヴ」で重なりハーモニーができ
あがると、いきなりwhen I was a little boy で始まる。ゴスペルグループと
の共演の最後は先週とりあげた「母からの愛のように」。いやあ、楽しいのな
んの。何もいうことはありません!
ここで、ポールがひとこと
'Well, let's hope we all continued to live.....'
(僕らみんな、生き続けられるといいね、、、、)
これは明らかにジョークなのですが、三十年前の米国の情勢は、想像以上に危
険と隣り合わせであり、あながち冗談とも思えない発言。聴衆は爆笑しながら
もきっと苦笑に近い笑いだったでしょう(現代も状況は変わらない?)。
最後の歌。ギターの前奏を聞けば、きっとサイモン&ガーファンクルファンな
らだれもが歓喜、あるいは涙を流すだろう(私は後者)。「アメリカ」。ひと
りぽっちのポールの歌声が会場いっぱいに広がります。きっと会場中の人の心
に深く刻まれただろうと想像します。でも妙に孤独にも聞こえます。なぜだろ
う?
このライブアルバムを聞く方はやはり熱烈なポール・サイモンのファンの皆さ
んのみかもしれません。どちらかというと多くの輝かしいアルバムの陰にかく
れた地味な存在でしょうね。でも、聞いてみれば宝の山。S&G時代とソロ活
動初期のポール・サイモンの色合いが感じられる楽しいアルバムです。特に他
アーチストとの共演が光っています。まだ聞いていない皆さん、チャンスがあ
ればぜひ一度聞いて下さい!
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