Song, Paul Simon ソング・ポール・サイモン

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      SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン

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Vol.14  2003年2月12日(水)

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夢のマルディグラ Take Me to the MardiGras
  アルバム「ひとりごと」 There Goes Rhymin' Simon 第3曲

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これは静かでとても味があり、そして楽しい曲です。ポールお気に入りのマッ
スル・ショールズのミュージシャンとともに作り上げた暖かいサウンドが光っ
ています。

エコーがかったゆったりとしたテンポのギター前奏。郷愁おびた懐かしい響き。
なんだか風景が目に浮かぶようです。楽器が加わると次第に楽しげで暖かい雰
囲気に、、、。

ポールのヴォーカルが子供っぽい声質に聞こえるのがとても微笑ましいですね。
珍しくこの歌では最初のフレーズが一人コーラスになっています。また、ヴォ
ーカルと一緒に歌い遊ぶエレクトリックギターのフレーズが楽しいですよ、よ
く聞いてみて下さい。

  Take Me to the MardiGras
  (マルディグラへ連れてって)

  Come on take me to theMardi Gras
  ねえ、僕をマルディグラへ連れてって
  Where the people sing and play
  そこではね、みんな歌うは、楽器を鳴らすは、
  Where the dancing is elite
  ダンスもイカしているよ
  And there's music in the street
  道に音楽が溢れているんだ
  Both night and day
  夜も昼間も

  早くマルディグラに行こうよ
  そこは夢の街
  法律だって君の意のまま
  夏服を着られるんだよ(夏服をもっていきな)
  ニュー・オリンズだからね

とても楽しそうなマルディグラとはお祭の名称。フランス語で「太った火曜日」
という意味だそうです。もともとはイースター前の断食に入る前に思い切り食
べまくろうという趣旨で始まった祭に、アフリカ系の移民やインディアン系の
儀式が加わり、今ではパレードあり音楽あり、とにかく食べ物を中心としたメ
チャメチャ楽しいお祭りだそうです。

※マルディグラとニューオリンズについて詳しいサイトを見つけましたので、
訪問してみて下さい。↓
http://www.alles.or.jp/~morishim/no.html

第二コーラスで登場する「夢の街(City of my dream」ということば、ポー
ルがいかにこのお祭りとこの街がお気に入りかを表していると思います。

次に登場する見事なファルセット歌声。私はポールが歌っている?と勝手に思
っていましたが、Claude Jeter(クロード・ジター?)でした。彼はポールが
「明日に架ける橋」を書くきっかけを与えた人でもあり、Swan Silvertones
という黒人ゴスペルソンググループを率いて活躍した名歌手です。さすが美し
く味のある歌声で聞き惚れてしまいました。

  And I will lay my burden down
  僕は煩わしさを全部積みおろし
  Rest my head upon that shore
  沿岸で頭を休めるのさ
  And when I wear that starry crown
  夜空いっぱいの星の冠をかぶれば
  I won't be waiting anymore
  他には何もいらない

海岸に寝そべって星を見る。いい時間ですね。夜空いっぱいの星を見ていると
まるで星でできた王冠をかぶっているような気持ちがする、とはスケールが大
きくてロマンチックな表現です。

  Take your burdens to the MardiGras
  いやなこと全部マルディグラへ持っていこうよ
  Let the music wash your soul
  音楽で魂の洗濯さ
  You can mingle in the street
  道で人に入り交じって踊り
  You can jingle to the beat
  Of Jelly Roll
  Jelly Rollのビートに浸るんだ
  
バックで引き続きジターの声が聞こえ、ポールのリードと絡んでハーモニーに
なる部分は最高!Wash your soul という彼のフレーズはこの部分を盛り上げ
ています。「音楽で魂の洗濯(心を洗う)」。うーん。いい歌詞ですよね。
mingleとjingleの英語の音声的響きも心地よいし。

歌詞はここで終わりますが、最後は「ドゥバ、ドゥバ」や「イェイ、イエーイ」
などでワンコーラス続けます。曲は更に盛り上がるんですね。この部分のバッ
クの演奏も楽しいですよ。

そして極めつけは最後の部分のOnward Brass Bandによる演奏。管楽器がお
どけて歌うのがまさにディキシーランド・ジャズ。見事にお祭りの雰囲気を醸
し出しています。

派手ではありませんが、ゆっくりとしたテンポの中、しみじみと少年少女の時
代を思い起こさせてくれます。更に色々な音が楽しめるこの歌「想い出のマル
ディグラ」。ぜひご堪能ください。

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3曲目まで聞いてきて、このアルバムThere Goes Rhymin' Simonでは、ポー
ル・サイモンがこれまで以上に、さまざまなミュージシャンとの交流と仕事を
楽しんでいることが強烈に感じられます。

サイモン&ガーファンクル時代は、ポールのギターのみによるライヴが最も好
きでした。他の伴奏は必要ないとまで思っていました。でも、こうしてソロに
なったポールが他のミュージシャンと作り上げるサウンドを聞いてみて、考え
はまったく変わりました。音楽に広がりがあるとうか、いえむしろ聞き手の私
がを一皮むけたのでしょう。バックの演奏だけを聞いても実に楽しいんです。

特にマッスル・ショールズのミュージシャンは、もともと「想い出のマルディ
グラ」のみの演奏のために起用したらしいのですが、彼らとの連携プレーが思
っ以上にスムーズに、そして満足いく出来だったため、本アルバム中合計5曲
で演奏してもらいました。彼らに対するポールの絶賛ぶりはすごいです。

素晴らしいミュージシャンと一緒に音楽を創り上げる。ポール・サイモンはま
さに至福の時を過ごしたに違いありません。その成果がこの「ひとりごと」な
んですね。

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【あとがき】

ニュー・オリンズといえば20年ほど前に訪れたことがあります。本当に暑い
所で、いつも夏服で過ごせそうです。1ドル払って、ジャズの小屋で演奏を聞
きました。結構高齢のプレイヤーが楽しげに演奏するのを見て聞いて、こんな
ふうに音楽を聴衆と共に毎日楽しむ生活って、いいなと思いました。

ここのところ、曲を聞く時にバックの演奏も注意深く聞いています。本当に、
バックなどと呼んではいけないほど宝石の山です。今日書いたマッスル・ショ
ールズのミュージシャンのように、最高の演奏家が精魂込めてプレイしている
んですから、当然ですよね。聞き流すなんてもったいないです。

諸事情で発行遅れ気味ですが、次号Vol-15をお楽しみに!


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