Song, Paul Simon ソング・ポール・サイモン

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      SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン

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Vol.12  2003年1月26日(日)

 僕のコダクローム Kodachrome
  アルバム「ひとりごと」 There Goes Rhymin' Simon 第1曲

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今週からサイモンのソロ活動後第二作目のアルバム「ひとりごと There Goes
Rhymin' Simon」からの楽曲紹介になります。

まずアルバムタイトルについて少し語りましょう。

邦題「ひとりごと」は完全な創作であることは、原題を見ればわかりますね。
サイモン&ガーファンクル時代の作品についても創作タイトルがありました
(このテーマは前のメルマガ all Simon and Garfunkelで随分書きました)。

じゃあ、原題の意味は? と問われて即座に答えを出せる人はなかなかいない
と思いますよ。英語そのものを辞書で調べてもよほど生きた言葉としての英語
に精通していない限り意味がよくわからないです。私も同じです。

rhymeとは詩などの「韻」の意味です。rhymingとなれば「詩を書く」という
ような感じになるのかもしれません。ということでこのタイトルは
「歌を書く(書き続けている)サイモン」
というようなメッセージをタイトルに込めているのかも、などと想像してみまし
た。このアルバムの次に発売となったライブのタイトルも"Live Rhymin'"です
ね。よほどポールはこの言葉が気に入ったのでしょう。

いずれにしても英語の本当の意味は私にはわかりません。どなたか詳しい方が
いらっしゃれば教えてください。

ただ、だいぶ以前にあるサイトで当時このアルバムを担当されていた方による
記述を発見しましたので、ご紹介しましょう。

http://www.pinpoint.ne.jp/manpokei/0202/020212manpokei.html

ここでは邦題をつけた経緯など大変興味深いエピソードがつづられています。
氏によれば英語の原題は「サイモンが相変わらずやっているよ」という意味だ
そうです。上の私の想像も、それほど遠いニュアンスではないようですね。

アコースティックギターに加えドラム、ベース、キーボードによる軽いタッチ
の前奏で「コダコローム」は始まります。

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  Kodachrome

  When I think back
  思い出してみるとさ
  On all the crap I learned in high school
  ほら、学校で教えてもらった「ガラクタ」のことを
  It's a wonder
  謎だよね
  I can think at all
  そうとしか思えないよ
  And though my lack of education
  だって、学校の勉強ができなくても
  Hasn't hurt me none
  困ったことなんかないじゃない
  I can read the writing on the wall
  壁の落書きだって読めるしさ
  
フォークソングっぽい普通のコード進行なのに、ロックン・ロール調のコード
とフィンガリングが間に入るところが、まさにスパイスの役割を果たしていま
す。このアクセントがピリッと効いていて本当に楽しいです。

学校時代に習ったことは人生において掛けがえのない事ばかり。あの時代があ
ったからこそ、今の私がいて、家族と健全な生活を送れている。老後も安泰だ
し、ああ、学校に感謝、感謝、、、。

という気持ちになるのは、時間がたってある程度人生を経験してからでしょう。
友達等人間関係の想い出が強烈に心の残っていて、きっと学校で習ったことは、
何の役にもたっていないという実感で生きていくことでしょう、たぶんいつの
時代も。

この歌の主人公もその一人。学校で習ったことはcrap(とるに足らないもの、
戯言、糞(汚い表現でスミマセン!))と言い切っています。ポールもこの
言葉をまるで唾を吐くように発しています。

字さえよめれば、事足りる。
またもやポール得意のジョーク。うまい表現です。

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  Kodachrome
  コダクローム
  They give us those nice bright colors
  イカした明るい色
  They give us the greens of summers
  夏の深い緑を僕らにくれる
  Makes you think all the world's
  世界中の
  A sunny day
  太陽の光だって
  I got a Nikon camera
  ニコンのカメラを手に入れたんだ
  I love to a photograph
  今、写真を撮るのに夢中
  So mama don't take my Kodachrome away
  だからママ、僕のコダクロームを取りあげないで

ここからが本題です。これまでポールのソロが似合う曲想でしたが、この長い
サビはコーラスが似合う楽しいフレーズになっています。ハーモニーはおそら
くポールの多重録音でしょう。最初の部分のコード進行から転調して独立した
イメージの印象をうけますね。それにこのフレーズの間何度も調が変わるのも
新鮮です。

白黒写真からカラー写真に転じた時代、人々はきっと夢を見ているようだった
でしょう。今はカラー写真が常識であり、モノクロ写真で写真を撮ったり、現
像をしてもらうほうが珍しい時代ですから、ぴんとこないかもしれません。そ
う、白黒のテレビがカラーに変わった頃のあの感動のように。かろうじて私は
知っている世代ですが、子供心にワクワクしたのを覚えています。

白と黒の色しかない世界に、赤や青、緑や黄色などの色が付くことの驚き!そ
れは同時にイマジネーションをも変化させました。子供がカメラを手に入れ、
カラーフィルムを扱って写真を撮る興奮。子供だけでなく大人だって夢中にな
ったはずです。なぜなら、この世のあるさまざまな色を、いつまでも記録でき
るようになったのですから。

「世界の太陽を手に入れられる」

その感動を現代の私たちはどの位理解できるでしょう。なぜなら、テレビやイ
ンターネットで、もはや世界の映像をそのままの色合いで手にすることは常識
だからです。情報が多い世界。その分人を感動させてくれるものは次第に少な
くなっているのかもしれません。

子供が夢中になるもの、そして大人がその価値観を理解できないものを、いつ
の時代も大人は取りあげようとします。今、きっとカメラを取りあげるような
大人はいないでしょうが、たとえば、ゲームや携帯電話を例に考えてみましょ
う。

お説教をいうつもりはありません。しかし、時代は変わる。それを受け入れる
か、拒絶するかによって、全く違う世界を覗くことになる。

そしてまた、、、。
失うものも少なくないことも知るべきでしょう。

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さて歌は冒頭のコードに戻って、再び語りへと、、。

  If you took all the girls I knew
  たとえば僕の独身時代の
  When I was single
  知り合いの女の子全員の写真をさ
  And brought them all together
  ごちゃまぜにして持ってきたとするよ
  For one night
  もちろん、この夜のためにね
  I know they'd never match
  でも役にたたないな、きっと
  My sweet imagination
  僕の甘美な想像力には使えない
  Everything looks worse
  みすぼらしいんだよ
  In black and white
  白黒写真だと

この部分、かなりキワドイ訳にしてしまいました。レコードやCDについてき
た訳と全然違うでしょう?(だから迷訳なんですね、、、)詳細についてはノ
ーコメントとさせていただきます、、、。

白黒写真は、カラーに比べて劣る、、、。
そう白黒だけの世界にいきなり色が登場すればそうなるのが当たり前。10年
前に私の愛用するMacでカラーの機種が登場した時、皆コーフンしたのを
覚えています。コンピュータで1670万色が表現できることの驚きです。

でも、色が付くことが必ずしも美か、というとそうもいえない時代がやってき
たのではないでしょうか。色がないから人間はイマジネーションの中で好きな
色を塗ります。同じ赤でも、イマジネーションの中の色はひとそれぞれ。私は
仕事がら色々な色に毎日出会いますが、それこそ千差万別の色の感覚があるこ
とに驚かされます。人の想像力は、本当にすごい。そして素晴らしい!

思い浮かべてみてください。あなたの恋人(伴侶)の肌の色、瞳の色。あなた
の娘さんの髪の毛の色、指の色。あなたの息子さんの腕の色。あなたのご両親
の頬の色。そしてあなたが愛するすべてのものの色合い。きっとそれらを想像
する時、心は暖かくなるはずです。

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メイン部分が終わりました。でも「僕のコダクローム」のクライマックスは実
はこの後にあるのです。

mama don't take my Kodachrome
と繰り返されるフレーズ。
快活で、楽しくて、体が動き、思わず踊りたくなります。

ここでは同じフレーズが続くのに、コードだけは変化していきます。当然、違
和感のある和音になるのですが、それを感じさせないパワーをも感じさせてく
れます。なにしろリズミカルですから、そんなことを全く感じないまま、聞く
方ものってきますよね。

長い繰り返しが終わると、ポールの「OK」という言葉が聞こえます。
「よーし!(これで終わりだ、あとはまかせた!)」
といった感じでしょうか。任せられるのはピアノ。まるでパーカッションのよ
うにピアノが活躍します。カッコイイとはこのことさ!(映画「紅の豚」向け
糸井重里氏の宣伝コピーみたいだ)

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【あとがき】

「ひとりごと」
このアルバムでポール・サイモンはまたもや違った顔をみせてくれます。前の
アルバムの深淵な人の哀しみから少し脱却して、今度はより暖かいものです。

それはまさに愛情。しかも恋人や妻だけでなく、親をはじめとした家族。そし
て広く人間へと、、、。サウンドの上では、よりロック色が強くなった上、さ
らに独特の色合いを帯びてきます。サイモン&ガーファンクル時代の音楽を期
待していた方からはさらに遠いイメージへと向かっているかもしれません。

でも、これが新しいポールの音楽でもあります。違和感のある皆さんもぜひ聞
き続けて下さいね。きっと気に入りますから。

ではVol-13までお元気で!


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