Song, Paul Simon ソング・ポール・サイモン

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      SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン

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Vol.11  2003年1月19日(日)

★CONTENTS★
 楽曲紹介
 コングラチュレーション Congratulations
    アルバム「ポール・サイモン」第11曲(終曲)

 情報
  ポール新曲「Father and Daughter」の試聴が可能に
  「音楽館〜サイモン&ガーファンクルの部屋」よりリンクが
  all simon and garfunkelでS&Gほぼ全曲の紹介文が


━楽曲紹介━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

コングラチュレーション Congratulations

さて、アルバム「ポール・サイモン」最終曲です。
サイモン&ガーファンクル時代とはかなり色彩の違う歌の数々を聴かせてくれ
たポール・サイモン。詩も曲もパンチの効いた「パラノイヤ・ブルース」でフ
ァンをあっと驚かせた後に、こんなにもしっとりとして深い歌をもってきまし
た。

最初聞いた時の戸惑いは正直いって忘れられません。
「コグラチュレーション」ですから、タイトルから察すると祝福の歌というこ
とになります。レコードを手にして、曲を聞く前は、どんな歌だろうとワクワ
クします。明るい歌だろうな。何を祝福するんだろう?聞けばきっと元気にな
れるんだろうな。、、と実に明るく前向きな期待。

実際は全く別の印象を受け、曲が終わった後も、言い知れぬ余韻、それも行き
場を失いさまようような余韻でした。

この歌も前奏なしでいきなりポールの歌とギターで始まります。

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・

  Congratulations!
  おめでとう!
  Oh, seems like you've done it again,
  みなさんまたやりましたね
  And
  I ain't had such misery since
  まだそんな目に遭ってない私も
  I don't know when,
  いつか同じ目に遭うかも知れない
  oh, and I don't know when,
  oh, and I don't know when.

最初の二行はいい。祝福の言葉です。
「結婚おめでとう!」
「お子様誕生おめでとう」
あるいは
「松井君、ヤンキース入団おめでとう!」
って続いてもいい(確かポールは野球ファンでしたね。あ、松井君は初めてで
すから「また」ではありませんか)。

「ついにヒットチャート一位ですね、中島さん!」
って続いてもいい(これだけロングヒットを続けた上での快挙!)。

でも三行目以後を見ると、どうもお祝いの言葉のような感じがしません。なぜ
ならいきなりmisery(苦痛、惨め)という言葉が登場するからです。何度も、
「いつか私も、、」という言葉を繰り返すのが、妙に気になります。

  大勢の人々がこっそりと立ち去り
  なお大勢の人々が列に並んでいる
  今日この法廷に

法廷から人がコソコソと立ち去る光景を見ている主人公。しかもまだ列に並ぶ
人々が大勢いる。何だろう?

そう、この歌は、離婚をモチーフにした「男と女の関係の難しさ」を歌ってい
るのです。

静かなピアノとオルガン、そしてベースギターとドラムによるバックが実に
効きます。さりげないピアノのフレーズが実にいいですね。もちろんポールの
ギターが伴奏の主役、というより曲の主役同然で、歌と常に会話をしながら進
みます。アルペジオとストロークのミックス、そしてベースギターのような低
音弦でアクセントを出す効果。伴奏だけで聞き応えは充分です。伴奏だけを聞
きたくてこの曲をかけることが私の場合よくあります。

歌はビートルズの「ヘイ・ジュード」のサビの前のように、7thコードへ展開
する半音階できざむのに、サビの部分は別のコードへ転調していきます。詩は
ついにテーマの核心に触れています。

  Love is not a game,
  愛はゲームではない
  love is not a toy,
  愛はオモチャでもなく
  loves no romance.
  愛は物語(ロマンス)でもない
  Love will do you in, and love will wash you out,
  愛は君を疲れさせ、そして君を滅ぼすだろう
  And needless to say you won't stand a chance,
  いうまでもなくお手上げで
  And you won't stand a chance.
  とても勝ち目はない

「愛は、、、」の部分はまさにつぶやき。ゲーム、おもちゃ、物語。愛にあこ
がれる若い世代(に限らないか、愛に世代は関係ないから、、)にはショック
な表現でしょう。愛を充分経験した層、特に泥まみれになった人々は、手を叩
いてつぶやくかもしれません、
「まさにそのとおり!」と。

人の心を癒す「天使としての愛」。人の心をもて遊ぶ「悪魔としての愛」。
人は離婚によってその悪魔を知ることになるのでしょうか。

Love is 〜の部分は転調したメロディが三拍子にのり、それこそ言葉を遊ぶよ
うに続きます。控えめだったベースもこのあたりからリズムにのって活発な音
の動きになります。でもこのサビは長くは続かずいつのまにか主メロディに戻
っていきます。

ポールの問い、つまりこの歌が訴えたかったこと、それはあまりにも悲しく、
寂しい問いでした。答えられる人はきっと誰もいないでしょう。

  I'm hungry for learning,
  ああ、知りたい(「教え」に飢えているんだ)
  Won't you answer me, please.
  誰か私の疑問に答えてくれないか
  Can a man and a woman live together in peace,
  男と女は一緒に安らかに暮らせるものなのか?
  Oh, live together in peace?
  共に静かに生きられるものなのか?

叫ぶように歌う I'm hungry for learning。
いつも以上にポールの叫びが強烈に伝わってくるフレーズで、ぐっと心に突き
刺さります。それにこのままの英語で充分伝わってきますよね。私の迷訳だと
雰囲気ぶちこわしでしょう。

男と女の関係。人間にとって普遍的なテーマです。大昔から現代まで、人は常
にこのテーマを抱えて生きてきました。こんなことなど考えたことがない、自
分はうまくやっている、と自信をもっていえる人はどんなに幸せでしょうか。

そして男と女ではなく、民族と民族の関係へテーマを膨らませれば、この歌の
根底にいかに深いものがあるかが思い知らされます。しかも、ポールの終始押
さえ気味の(ヴォーカルの音量も低めで、まるで遠いマイクで歌っているよう
にも聞こえます)歌声、循環するようなメロディが、冬の灰色の光景の中でさ
まよう人間の心の内を映し出すようです。

しみじみとした歌が終わると、長い後奏になります。最後はバスドラムだけの
パーカッションとピアノだけのデュエット。そしてピアノの短いアドリブで幕
を閉じます。アルバム最後を飾るにふさわしい余韻を生む素晴らしいサウンド
です。(曲が終わった後はぜひしばらく静寂の中で曲の余韻を楽しみましょう)

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−

11曲全曲の演奏時間34分34秒。意外なほど短いアルバム「ポール・サイモン」
です。さまざまな表情をもつ曲、しかもサイモン&ガーファンクル時代とは全
く異なる顔を見せて(魅せて?)くれました。

ポール・サイモンの全アルバムの中で迷わずこの「ポール・サイモン」を一番
のお気に入りにあげる方は多いようです。それは日本はもちろん本国の米国で
も同じです。

発売以来30年のアルバムがこれほど長く愛され続けているその理由はなにか?
このメールマガジンを始めてから毎号書き続けてきて、おぼろげではあります
が、感覚的にはわかってきたような気がしています。でも、はっきりと言葉で
表現できないんですね。言葉で表現できるほど単純なものではないからでしょ
う。

いえ、理由なんかを考える必要はない。嬉しいとき、怒っているとき、哀しい
とき、楽しいとき、好きなときにこのアルバムを聞きましょう。ポールの歌と
サウンドの中に身を浸りましょう。それだけでいいはず。なぜなら、これはそ
のためにポールが私たちにくれたプレゼントなのですから。

━━情 報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

=ポール・サイモン公式サイト情報=
★ポールの新曲「Father and Daughter」
今日ポール・サイモンの公式サイトを訪問すると、
新曲「Father and Daughter」の紹介があり、曲もストリーミング形式で聞け
るのを発見しました。ストリーミングは曲のさわりではなく全部聞けるように
なっています。詩も掲載されています。

★新ベストアルバム「Paul Simon Selection」紹介
新しいベストアルバム「Paul Simon Selection」紹介ページでは、収録曲一
覧から各曲のさわりが聞けます。特別収録予定のライブバージョンは、毎週順
に一曲のみ全部聞けるように設定するとのことです(期間限定?)。今は「ダ
ンカン」のライブバージョン(これはLive Rymin'版と同一のような?)が聞
けます。※要Windows Media Player
ぜひご訪問下さい。
ポール・サイモン公式サイト
http://www.paulsimon.com/

=「音楽館〜サイモン&ガーファンクルの部屋」よりリンクが=
サイモン&ガーファンクルの紹介・話題・評論サイトとして定評があり、皆さ
んもよくご存じの「音楽館〜サイモン&ガーファンクルの部屋」のリンクに
音楽夜話musiker21を加えて頂けることになりました。大変光栄なお話です
し、これでさらに多くの皆さんにS&Gの歌をご紹介できるチャンスが広がり
ました。webマスター佐藤様に心より御礼申し上げます。
本マガジン読者のほとんどの方が既に同サイトをご訪問済かと思われますが、
まだの方はぜひご訪問下さい。
「音楽館〜サイモン&ガーファンクルの部屋」
http://plaza12.mbn.or.jp/~satom/sg.htm

=all simon and garfunkelでS&Gほぼ全曲の紹介文掲載=
音楽夜話musiker21のサイモン&ガーファンクルコーナー(all simon and
garfunkel)を整えほぼすべての作品の解説をお読みいただけるようになりま
した。多くはメールマガジンの文章を使っていますので、以前の読者の皆さん
には重複した内容となりますが、今後少しづつ加筆していくつもりです。
http://www.musiker21.com


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