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SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン
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Vol.6 2002年12月8日(日)
「僕とフリオと校庭で」 Me And Julio Down By The Schoolyard
album「ポール・サイモン」第6曲
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ジャーン ジャーン ンジャッジャッジャッ ンジャジャ
ジャーン ジャーン ンジャッジャッジャッ ンジャジャ
小さなギターの音によるコードストローク。シンコペーションのアンプテンポ
の気持ちの良いストローク。ギターは二台になり、そして三台と増えていきま
す。楽しげな歌の始まり、始まり〜!
(この最初のギター二台はエレクトリック・ギターをアンプを使わない状態で
弾いている音だそうですよ)
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The mama pajama rolled out of bed
パジャマ姿のままベッドからころげ落ちるように
And she ran to the police station
ママは警察へ駆け込んだ
When the papa found out he began to shout
パパは見つけると、いきなり怒鳴りだし
And he started the investigation
調査を始めたんだ
It's against the law
法律違反
It was against the law
法律違反さ
What mama saw
ママが見たもの
It was against the law
それは法律違反だった
子供が何かをやっていて、それが親に見つかってしまった。よくあるお話。事
の大小はあるものの、心当たりのある方多いんじゃないですか?私も大きな声
ではいえないけれど、、、、。
。
親のあわてふためた様子のドタバタぶりががコミカルによく描写されている詩
です。流れるように続く言葉の連なりと、シンコペーションに乗ったノリのい
メロディとの調和が本当に見事。
親に見つかった悪戯(?)ですから、普通はこっぴどく怒られる位で済みそう
ですが、この場合は大事になってしまいました。なぜなら「法律違反」だから。
いったい何をやったんでしょう?
「法律違反だ!」というシリアスな歌詞とは逆に、この部分のメロディの快活
さが底抜けに楽しいです。
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事は重大に発展していきます。両親の怒りは爆発します。
「このバカ息子が!」という感じでしょう。そんな気持ちが次のコーラスによ
く現れています(武田徹矢氏のお母さんにならこっぴどく怒やされそう)。
The mama looked down and spit on the ground
ママは下を向き、地面に唾をはく
Every time my name gets mentioned
僕の名前が供述で出るだびに
The papa said oy if I get that boy
パパは言う、「もし息子を見つけたら
I'm gonna put him in the house of detention
私が牢獄にぶちこみます」、と
第一コーラスもそうでしたがこの「怒りマーク」の箇所のおかしさったらあり
ません。mentioned、detentionなどの韻によるサウンドの心地よさもいい。
Well I'm on my way
だから、我が道をいくんだ
I don't know where I'm going
どこへ向かっているんだろう
I'm on my way I'm taking my time
これが自分の道、これが自分の時間
But I don't know where
とにかく行き先はわからない
Goodbye to Rosie the queen of Corona
コロナの女王ロージーよ、さようなら
See you, me and Julio
僕とフリオに
Down by the schoolyard
校庭でまたお目にかかりましょう
See you, me and Julio
Down by the schoolyard
Me and Julio down by the schoolyard
事件発覚後、主人公は逃げるわけですが、ここからは悪戯をやらかしてしまっ
た子供ではなく、親から精神的に独立しようとしている少年のつぶやきのよう
に聞こえます。
ポール・アンカが作った"My Way"という歌がありますね。人生をふり返り、
「自分は自分の道を歩んできた」ことを高らかに誇る歌でフランク・シナトラ
をはじめ、数々の歌手がこの歌をそれぞれの個性で歌っています。
上のコーラスに出てくるI'm on my wayという言葉は"My Way"ほど大きくは
ないものの共通した意味があると思います。ポールはこのフレーズを軽いタッ
チで歌います。その軽いタッチが若々しくなお一層誇らしげに聞こえますね。
See you, me and Julio
Down by the schoolyard
クライマックス部分(歌のタイトルと同じ歌詞)の変則リズムも、軽さの極み。
効果的です。ポールの歌作りは見事というしかありません。
最後のコーラスは事の顛末。話は更に大げさに発展しました。
数日後、奴らはやって来て
僕を連れて行くはずだったんだけど
報道が話を暴露したため
先進的牧師がやって来て
僕は釈放された
僕らはニューズウィークの表紙を飾ったんだよ
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法律違反については色々な憶測があるようです。ポール自身は、
「性的な何か。でも漠然としていて、具体的に何というイメージはない。
まあ、それが何であっても僕には同じだし」
と語ります。
映画「ティファニーで朝食」の原作を書いた作家トルーマン・カポーティは
「同性愛」ではないかと言及したそうです。
でも、その発言に対するポールの発言。
「そういう見方もありそうだとは思っていたけれどね、、、。それは違う。
その種の冗談は、まあ意味ないね」
まあ、「法律違反」=??
聞く人それぞれが想像する世界ということでしょうね。
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「僕とフリオと校庭で」は歌詞の意味を考えるのもとても面白いのですが、発
音つまり英語という言語の音声としての美しさや楽しさを耳と体で感じること
ができる典型的な歌。もちろん歌と伴奏と一体となったサウンドとしてです。
アルバム「ポール・サイモン」は本当にポールの新しい魅力が満載の作品ばか
り。それでもA面はどこかポールらしいウィットに富んだ気品のようなものが
漂っていました。でも、B面になるとその気品は保ちながらもいわば解放され
た明るさのようなものがひときわ目立って感じられる歌が登場してきます。と
りわけ「僕とフリオと校庭で」からはS&G時代の作品とは全く違うエネルギ
ーが放たれます。
前奏から最後まで知らぬ間に体が動いてしまいますし、聞けば心うきうきして
きます。さあ、しばらくご無沙汰の皆さんは、ぜひお聞き下さい。きっとパワ
ーをもらえますよ!
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【あとがき】
毎号迷訳を掲載していますが、歌詞の意味やニュアンスを考えるための道具で
もあり深追いするのは避けています。ポールの書く詩は思慮深いので、つい意
味を追求したくなるけれど、時には言葉遊びやジョークが混じっていて、油断
(?)できません。そこがまた楽さでもありますが、、、。
今号よりE-Magazineからの配信も始めます。まだ読者0人ですが一人でも多
くの購読者をお迎えできれば嬉しいです。
では次号Vol-7までお元気で!
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