「パターンズ」 Patterns
パターン。この言葉から、皆さんは何を連想しますか?
私は職業柄、Illustratorというグラフィックデザイン用のソフトで使うコマンド名を思い出します。と、関係ない話題に振るのはやめて、、、。
日本語にすると、模様、柄、デザイン、型、様式、方向、傾向、模範、手本、原型、ひながた、などと、ランダムハウス英語辞典には書かれています。
さて、サイモン&ガーファンクルの作品「パターン」は「模様」と訳されていますが、英文のタイトルから、個々の想像でイメージしたほうが、よいでしょう。先入観をもってしまうと、曲そのものも楽しめませんので。この曲、改めて注意深く聞いてみると、とてもシンプルな楽器構成による伴奏、しかも効果的な使い方なのです。
力強い、ギターの前奏。変則チューニングが印象的。
最初の2コーラスは、ベース、パーカッション(コンガ?)のみの演奏。サイモンのソロと、要所要所の単語に、ガーファンクルの短いハーモニーが加わります。それもそれこそワンパターンではなく、毎回違い、いい味を出していて、効果的です。
2コーラスの終わり、そして3コーラスには、ポール・サイモンによる、ギターがバックに重なります。このギターのフレーズが「おもしろい!」。
そして、間奏。これも、音楽にぴったりのフレーズ、独特ですね。
4コーラス。詩的には、クライマックスなのですが、歌は、前の雰囲気をそのまま継承し、あっさりと終わってしまいます。
詩の内容を要約すると、
夕暮れ時、木々と夕陽が描く模様
部屋の壁のキャンバスに
影が描く様々な模様
子供の落書きのような
パズルのような模様
そしてそのパズルと
自分の人生を重ねるもの
人間をうたうポールの詩はどこか寂しげ、でも奥深い。
3コーラスの詩だけ紹介しますと、
From the moment of my birth
生まれた瞬間から
To the instant of my death
死ぬそのときまで
There are paterns I must follow
追いかけなければならないパターンがある
Just as I must breathe each breath
呼吸しなければならないように
Llke a rat in a
迷路にはまったネズミのように
The path before me lies
僕の前には道があるけれど
And the patern never alters
そのパターンを変えることはできない
Until the rat dies
ネズミも(僕も)死ぬその日まで
Copyright:Paul Simon
「Patterns」第3コーラスより
この寂しげな内容と、独特のメロディ、そしてアレンジがこの曲を実に味わい深い作品に仕上げています。
特にガーファンクルがつける要所要所のハーモニーは特筆もの。
casting
light
gloom
patterns of my life
death
There are Patterns I must follow
like a rat
old
の単語についたコーラスが印象的です。なぜこれらの言葉をショッキングなイメージに演出したのか、大変興味深いではありませんか。
え?ただフレーズの成り行きでハーモニーをつけたのでは、という意見もあるでしょうが、私は、そこに彼らのメッセージがあるような気がします。
「パターンズ」は、「サイモン・ビフォー・ガーファンクル」(ポールが英国でシンガーとしてクラブ回りをしていた頃に録音されたLP。現在は廃盤となっている)の最終曲としても収録されています。田口隼彦氏のライナーノートによると、この歌は「サイモンが無名だった頃の旅回りの一日が忠実に描写されている」、とあります。そうかな?確かに旅回り時に書かれたでしょうが、彼旅回りの一日?そんな雰囲気は詩からは想像できません。彼は、日常の生活の出来事に重ねて、人生を歌っているのではないでしょうか。
CD版の「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」にも、ボーナストラックとして収録されていますので、4(それこそ)パターンの歌が聞けるという、やはりポールにとっても、重要な作品のひとつのようですね。
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