「旧友」 Old Friends
第六曲目「旧友」 印象的なコード展開のメロディのこの歌を聞くと、いつも身震いがしてきます。
フェードインしてくるストリングス。ギターのコード。
Old freinds,
古き友
Old freinds
懐かしい友
Sat on their park bench
公園のベンチに座っている
Like bookends.
まるで本立てのように
A newspaper blown through the grass
芝生を風に飛ばされてきた新聞が
Falls on the round toes
老人たちの厚底靴の
Of the high shoes
つま先に
Of the old friends.
落ちていく
ブックエンドのように座るというとベンチで隣り合わせではなく、間を置き離れて座っている光景を想像します。つまり隣人の関係ではない。公園のベンチで、会話をかわすことのない老人が二人、少し離れて座っている寂しい光景です。
そういえばヨーロッパの街の公園では、じっと長い間静かに、読書もなにもせずただ通行人を見ているだけの老人たちが、ベンチに座っているのを見たことがあります。彼らは時が過ぎるのをああして一日中待っているのだろうか?
旧友
冬の仲間たち
オーバーコートに身をくるみ
日暮れを待っている
街のざわめきが
木々の隙間から
漏れ聞こえ
旧友たちの
肩に
ほこりのように
はりついている
冬なのに外で過ごしているのですね。オーバーコートに身をくるんでいても、心も体も寒い!街のざわめきは老人たちには何の関係もない単なる粉塵。コートにはりついたほこりを、彼らははらい落とすのでしょうか?
アートのソロによるサビは、美しいメロディと、衝撃的な詩で、本当に印象的です。
君は想像できるだろうか
今日から何十年か後
静かに公園のベンチを
分け合い座っている光景を
70歳になるなんて
恐ろしいくらいに不思議なことだ
七十歳になる。そんなことを恐らく二十歳、あるいは三十歳台でも考えることはないでしょう。月日の経過については人間は恐ろしく鈍感です。特に若い日々は。でも、確実に時は過ぎ、人は歳を重ねます。結婚し、子供が生まれ、成長し、自分の親も歳をとり、はじめて人間は自分の年齢を意識するでしょう。しかし、その時でも、未来の年老いた自分を想像するのは難しいことです。いや、想像することから逃げているのかもしれませんね。
Old freinds,
旧友
Memory brushes the same years.
記憶は同時代を輝かせるけれど
Silently sharing the same fear
同時に同じ「恐れ」も、無言で分かち合う、、、
老人同士で語る共通の時代は輝かしい思い出です。他の世代には全くわからないけれど、老人同士は分かり合えるのです。しかし、分かち合うのは喜びだけでなく、恐れ。それは以後の人生における自分に対する恐れでもあります。
ギターとストリングスのアレンジで、クライマックスを迎える「旧友」のラストは、同時にブックエンド組曲のクライマックス。ストリングスの力強い演奏は混沌とした様子に変化していきます。そして、一本の音で弦楽器が長い音符をのばした後、アルバム冒頭のメロディが再びギターで奏でられ、感動を呼び起こします、、、、。
|