ナンバーズ・ゲット・シリアス When Numbers Get Serious

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ナンバーズ・ゲット・シリアス When Numbers Get Serious
             アルバム「ハーツ・アンド・ボーンズ」第3曲

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アルバム「ハーツ・アンド・ボーンズ」には深い邦訳タイトルの付く作品があ ります。その一方、英語の発音そのまんまカタカナ表記しただけの曲もありま す。この扱いのギャップは何だ?と疑問に思う時もあります。もっとも、下手な 邦題名がつくよりはましかもしれません。発音まんまの曲は、相当日本語に するのが難しい曲ということになるでしょう。触らぬ神にたたりなし。でも、 私はあえてそのタブーに挑戦します。で、この題名です。笑ってください。

そもそも、「マジ」という言葉が100年後に使われている保障はないので、こ ういう邦題はまずいけど、現代は意外にフィットしそうです。数字は人間 じゃないので、マジにはならないんですが(笑)。単刀直入にいえば、記号に 過ぎない数字が意味を持つと、大きなパワーを持つことになります。

 When Numbers Get Serious
 数字がマジになる時(数字が意味をもてば)

 I have a number in my head
 頭の中にある数字
 Thought I don't know why it's there
 なんとなくあるだけの数字
 When numbers get serious
 でも、数字が意味をもてば
 You see their shape everywhere
 あちこちで形となって現れる
 Dividing and multiplying
 わり算にかけ算
 Exchanging with ease
 簡単な両替
 When times are mysterious
 覚えられないほど繰り返したとき、ようやく
 Serious numbers are eager to please
 マジな数字は喜びしゃしゃり出てくる

前奏なしでいきなりポールのヴォーカル。調子のいいリズムにのった、すっと ぼけたような歌い方が笑えます。静かなギターと、小気味のいいドラム、そし てベースが、また効きますな。

一応初等教育を受ければ、誰にも記号としての数字はわかるはず。頭の中で思 い浮かぶ数字、いくつかあるでしょう。でも、それはただあるだけ、何の意味 もない数字です。意味のある数字といえば、辺りにたくさん見つかるはず。と いうより、数字には必ず意味が付加されている。意味のない数字といえば、計 算練習などで使われる数字くらいじゃないでしょうか。ここのフレーズおもし ろのは、数字を意識し出すと、至る所に現れる、というくだり。まるで3や5 や8がそのあたりをぷかぷか浮き沈みしているような錯覚でしょうか。

わからなかったのは、When times are mysterious の部分です。timesは 「かけ算」なのかそれとも「時」か。「時が神秘的になると」なんてロマンチ ックな表現だけれど、この歌にはあまり似合いません。「かけ算」というのも おかしい。無難に「謎めいた時になると」で逃げようと思ったのですが、これ は、どうも回数がおぼつかなくなった時。つまり、数え切れないくらい繰り返 した結果、という意味ではないか、という私なりの結論に達しました。

次はアップビートで盛り上がります。ノリノリの歌いぶりが楽しいですね。
ベースの動きに注目!

 Take my address
 僕の住所を知りたい?
 Take my phone
 電話番号もかい?
 Call me if you can
 いいよ、連絡くれよ
 Here's my address
 これが僕の住所
 Here's my phone
 これが電話番号
 Please don't give it to some madman
 変な奴に渡さないでくれよ
 Hey hey, whoa whoa
 Complicated life
 まったく面倒な世の中さ
 Numbers swirling thick and curious
 数字が渦巻き肥大しておかしな形になったら
 You can cut them with a knife
 You can cut them with a knife
 ナイフで削らなきゃ

数字がらみで、住所とは、通り番号や番地でしょう。電話は数字そのもの。
some madmanは、現代は至る所に潜んでいますから本当にご注意。ぶっそう な世の中にポールもうんざりしています。数字がグルグル巻きになり肥大する なんて、ダーマクラフトという名の色鉛筆(先の糸を少し引きグルグル巻きの 木の皮を剥いていく鉛筆。赤や黄がポピュラーかも)の逆みたいで可笑しいで す。ポールの場合は、ナイフで削るんですが…。ギターの時計のようなコード ストロークがいいです。
次は全くおふざけ。

 Two times two is twenty-two
 2×2=22
 Four times four is forty-four
 4×4=44だっけ
 When numbers get serious
 数字が意味をもつと
 They leave a mark on your door
 ドアに存在を刻む
 Urgent! Urgent!
 急いで、急いで
 A telephone ringing in the hallways
 玄関で電話が鳴っている
 When times are mysterious
 覚えられないほど繰り返したとき、ようやく
 Serious numbers will speak to us always
 マジな数字が僕らに話しかけてくる

冗談なのはご承知の通り。でも、2×2は22といわれると妙に納得してしま います。ぞろ目は感覚的に縁起がよさそうですし(?)。今度は、ドアの番号。 つまり○号室。ビンビンいうギターが爽快。

 That is why a man with numbers
 だから数字と仲の良い奴は
 Can put your mind at ease
 君の心をたやすくつかめるんだよ
 We've got numbers by the trillions
 そのうち、兆の桁が必要になってくる
 Here and overseas
 ここでも海外でも
 Hey hey, whoa whoa
 Look at the stink about Japan
 日本に対する大騒ぎをご覧よ
 All those numbers waiting patiently
 数字は(使われるのを)我慢強く待っているのさ
 Don't you understand?
 Don't you understand?
 わかるかい?

数字と仲のよい人間は悪役でしょうか、それとも正義の味方?いや、実はむし ろ、数字に踊らされているといえるかも。兆の桁の上が日本の国家予算に必要 となる日もそう遠くないでしょうし。日本に対する大騒ぎとは、輸入問題で大 騒ぎしていた頃の米国を皮肉っているんでしょうか。

いきなり変拍子になったかと思うと、今度は、話題が一転して愛のささやきで す。

 So wrap me
 Wrap me
 Wrap me do
 僕を包んでくれよ
 In the shelter of your arms
 君の腕のシェルターに
 I am ever your volunteer
 僕は君のヴォランティア
 I won't do you any harm
 傷つけたりしないよ
 I will love you innumerably
 君をおもいきり(数え切れないくらい)愛するのさ

shelter of your arms とは、腕を保護する包帯やサポーターをイメージして いるのでしょうか。そこに自分を刳るんでくれ、なんて可愛い表現です。僕は 「君を守る」んだという心を精一杯伝えたいのでしょう。猫なで声のポールが イヤラシクも、微笑ましいです。

 You can count on my word
 僕の言葉を数えてごらん
 When times are mysterious
 回数が怪しくなって、はじめて
 Serious numbers will always be heard
 大事な数字が聞こえてくるのさ

「愛している」と何度も繰り返すのでしょう。回数も覚えられないほど「愛し ている」と繰り返されてこそ本当の愛情表現となるのかも(本当か?)。
このコーラスは繰り返され、そして、突然三拍子に。

 And after all is said and done
 おしゃべりと騒動が終われば
 And the numbers all come home
 やっと、数字たちはみな家へ帰る
 The four rolls into three
 4は縮んで3になり
 The three turns into two
 3は2に変身
 And the two becomes a
 One
 そして、2は1になる

最後は、擬人化された数字が、いよいよ退散する場面です。「アレジー」でも アレルギーたちが何かを食べに出かけました(笑)。あんなにたくさんあった 数字が、巻き戻り、最後は1になる。ここには、愛する二人が、ひとつになる、 ことを暗示しているようです。

息をつく間も与えない、最初から最後まではらはらドキドキの音楽展開。転調 や変拍子、8ビートから3拍子へリズムの変化。などなど、音楽的にも楽しさ 一杯のこの歌。静かにバックコーラスをダブらせるポールにも注目しましょう。


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