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「冬の散歩道」 A Hazy Shade of Winter
 
 今日は「冬の散歩道」を中心に、あれこれ書いてみました。
 
 (1) オリジナルタイトルと邦題とのギャップ
 最近、サイモン&ガーファンクルの歌の邦題と英語題名との、ニュアンスの違いが気になるようになりました。
 
 前に「夢の中の世界」のタイトルの事を書いた通り、英語の詩の内容から見てもやや違和感のある邦題がついている曲が数曲あります。
 
 例えば、
  Somewhere They Can't Find Me
  邦題:「どこにもいないよ」→「何処か見つからない場所へ」
   ※誰かを捜していて見つからないみたい。鬼ごっこじゃないんだけれど。
    追っ手(警察)から逃げる、逃亡者(?)の歌のイメージにならない。
    
  We've Got A Groovy Thing Goin'
  邦題:「はりきっていこう」→「うまくいってたのに」
   ※「はりきっていこう」だと、アリナミンVの宣伝に使えそうなタイトル。
    恋人に別れを告げられ、あわてふためいている男の歌ではなくなる。
    
  Dangling Conversation
  邦題:「夢の中の世界」→「すれ違い(宙ぶらり)の会話」
   ※前にも書いた通り、作品のイメージが全く逆になってしまう。
    タイトルとしては美しいけれど、、、。
 
 「冬の散歩道」もそのひとつです。英語のオリジナルタイトルは、
 A Hazy Shade of Winter(ア・ヘイズィー・シェイド・オブ・ウィンター)
 そのまま訳すと、
  「よどんだ冬色」(安っぽいJ-POPタイトル?)
  「冬の影」(ドラマのタイトルみたい?)
   詩ではその前にsky がありますから、
  「曇った冬の空模様」(天気予報?)
   意訳して「憂鬱な冬の空の色」とでもなりますか。
 書いてはみたものの、邦題としてはなんだかぱっとしませんね。
 やはり「冬の散歩道」の方がいいかな?
 
 この歌の詩をよく読んでみるとわかりますが、「散歩道」とイメージできる内容はありません。邦題をつける時に、関係者が考えたあげく、この題名に決定したんでしょうが、さてそれは「当たり」だったのでしょうか?
 
 (余談ですがアルバム「ザ・サウンド・オブ・サイレンス」のジャケットでは、ポールとアートが、冬景色の中、道を歩く光景が写っています。二人はマフラーをつけ寒い中歩く様子がうかがえます。これはまさに冬の散歩道のイメージでしょうか。
 
 (2) 詩をよく読むと、、、
 この詩は、4コーラスあり、各コーラス、前半と後半の2部に分かれます。
 後半が前奏のイメージのメロディの歌。いわゆる「サビ」ですね。風景が歌われます。
 
 Look around (あたりを見てごらん)
 Leaves are brown (木の葉は茶色になり)
 And the the sky   (空は)
 is a hazy shade of winter (曇りがかった冬の色合いだ)
                       Copyrght:Paul Simon
 
 このサビのフレーズは、4コーラス共繰り返されますが、唯一3コーラス目では、春の光景と、
 It's the springtime of my life(僕の人生の春が来た!)
 と明るいイメージが歌われています。他は上の四行の詩。
 
 さて、重要なのはポールの心情が表現されている前半部分。
 主人公の人生の回想から、親しい友への語りかけ、そして友との別れ(決別?)のイメージが漂います。
 1コーラス目では、
 Time time time(時は過ぎて)※このフレーズが印象的!
 See what's become of me(今の僕を見てごらん)
 That I put my possibility(可能性を探ってきたけど)
 I was hard to please(満足なんかできない)
 がむしゃらに走ってきた自分の今、それはどうなのか?という問いかけ。
 
 2コーラス目では、友へのエール。君は君でうまくやれよと。
 
 3コーラス目、希望を捨てず、常に希望を見つけて突き進め友よ。
 ここで明るいイメージのサビが使われているのは象徴的?
 
 4コーラス目、去っていった(旅だった)友に、たまには自分の事を
 思い出してくれ、という本心。書きかけの原稿、ウォッカ&ライムを飲むという極めて、現実的記述。ここも私は好きですね。
 (この「未発表の詩の原稿を見つめている」という部分が、ポールの当時の気乗りのなさを象徴しているともされています)
 
 冬の荒涼とした景色のイメージと心の中の情景が見事に重ねられている優れた詩だと思います。
 
 (3) 主役は十二弦ギターのフレーズ、そして歌
 歌については私が語ることもないでしょう。軽快なリズム、力強い歌声。早口ですが歌詞をクリアに発音しているのが特徴です。それにしても二人の息のあった歌いぶりは圧巻です。特にアートの高音部ハーモニーが効いています!
 
 特筆すべきは前奏、サビの部分で効果的に使われている十二弦ギターの印象的なフレーズ。主役といってもいいかもしれません。タンバリン、控えめなドラムとベース。そして(たぶん)ギターのボディを叩きリズムをとっているのも特徴です。要所にはオーボエや、トランペットなども
 加わります。でもあくまでも伴奏の主役はギター。
 
 二人はどんな曲でもレコーディングまでに、ボーカル・ハーモニーやギター・パートをああしようこうしようと時間をかけて打ち合わせし、二人の歌とギターだけの演奏でほぼ完璧な状態にしていたようです。
 他の部分は味付けみたいなものとも語っています。
 (3枚組「Old Friends」のパンフレット訳より)。
 
 数年前に、テレビドラマでこの歌が主題歌として使われましたので、S&Gを知らない世代にも曲だけは耳に残っているかもしれません。
 1966年暮れにシングルリリースされた彼らのヒット曲のひとつ、「冬の散歩道」。詩といいメロディといい、やはり彼らならではの作品ですね!

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