Song, Paul Simon ソング・ポール・サイモン

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      SONG, PAUL SIMON/ソング・ポール・サイモン

         Vol.30  2003年6月14日(土)

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「楽しくやろう」 Have A Good Time
            アルバム 「時の流れに」第8曲 1975年

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この歌をひきたてるバックは何といってもボトルネックギター(ですよね?)
でしょう。前奏から早速登場します。あの摩訶不思議なギターの音色は病みつ
きになります。昔挑戦しましたがうまく弾けず、すぐ挫折しました。

曲の感じはスローロックで乗りがいいんですが、内容としては意味深な歌です。
タイトルの通り Have a good time ですから楽しくやろうよと歌うわけですが、
それにしては楽しげな話題なんか全く出てきません。

Have A Good Time

               Lyrics by Paul Simon(迷訳:musiker)

  Yesterday it was my birthday
  昨日は誕生日だった
  I hung one more year on the line
  また一年間さらしものになるってわけか
  I should be depressed
  落ち込まされるんだろうな
  My life's a mess
  俺の人生は混乱続きだから
  But I'm having a good time
  でもまあ、愉快に生きている

誕生日が嬉しいのは人間何歳までなのでしょう。その人の人生によるでしょう
が、○歳になったと成長を喜ぶ人がいれば、一方で、またひとつ歳をとったと
マイナスに考える人。
ボトルネックギターのアクセントをささえるのはベース、そしてドラム。控え
めなエレクトリックギターのコードストロークも渋い!

  I've been loving and loving
  And loving
  恋をして、恋をして、恋をしまくった
  I'm exhausted from loving so well
  もう恋に疲れ果てくたくた
  I should go to bed
  だから眠る時になっても
  But a voice in my head
  頭の中の声でこうつぶやくんだ
  Says "Ah, What the hell
  「俺、いったい何やってんだよ……」

  CHORUS: Have a good time
  楽しく生きようよ

ちゃんと恋についても出てきますね。恋愛にのめりこみ、あげくの果てに疲れ
果ててしまいます。バックにはブラスセクションと女声コーラスも加わりサウ
ンドがますます厚みを増してきます。

  Paranoia strikes deep in the heartland
  被害妄想は心臓に良くないっていうけど
  But I think it's all overdone
  大袈裟なんだよ
  Exaggerating this exaggerating that
  誇大妄想は重なっていくばかりでさ
  They don't have no fun
  ぜんぜん楽しくない

  I don't believe what I read in the papers
  新聞に書いてあることなんか信じない
  They're just out to capture my dime
  奴らはただ10セントを俺からぶんどりたいだけさ
  I ain't worrying
  心配なんてしないし
  And I ain't scurrying
  急ぎもしない
  I'm having a good time
  愉快に生きるんだ

  CHORUS: Have a good time
  楽しく生きようよ
  
さてこのあたりになると、主人公相当無理しているような感じがしませんか。
とんでもない人生なんだけれど、忘れて「楽しくやらないと」やってられない
っていう雰囲気が見え見えです。のんびりマイペースのような彼は実は相当に
疲労困憊していそうです。酒でも飲んで忘れようとする哀しい男の姿が妙にク
リアにイメージできます。

  Maybe I'm laughing my way to disaster
  俺は災難に向かう現実を笑い飛ばしているのさ
  Maybe my race has been run
  たぶん俺のレースはとっくに終わり
  Maybe I'm blind
  もう何も見えない
  To the fate of mankind
  人類の行方なんかは
  But what can be done?
  でもどうしろっていうのさ
 
開き直っています。悲劇に向かい日々を送っていることに対するあきらめ。人
生はすでに終わっているも同然なのです。しかもなすすべもない。最悪ですね。
そして最後はやけになって、というかあきらめで、神頼み。

  So God bless the goods we was given
  神よ、僕らに与えたものを讃えてくれ
  And God bless the U. S. of A.
  神よ、アメリカを讃えてくれ
  And God bless the standard of livin
  神よ、普通の人生を讃えてくれ
  Let's keep it that way
  どうかそのまま
  And we'll all have a good time
  そうすれば楽しく生きられる

  CHORUS: Have a good time
  楽しく生きようよ

終始同じ調子で、特別な盛り上がりもないまま歌は終わります。淡々と進む音
楽が歌詞の投げやりな雰囲気と見事なコントラストになっています。歌が終わ
るとカッコイイサックスのソロ。このアドリブは歌の主人公の「叫び」かもし
れませんね。

ポール・サイモンの投げやりな歌い方もヴォーカルと女声コーラスがいい感じ
でフィットしています。ブラスセクションが特に効果的です。

人間はいつも前向きではいられませんので、たまにはこういうあきらめ「やっ
てられないぜ!」って発散するのも必要。アップテンポで騒ぐのもいいけれど、
こういう都会的アレンジでつぶやくのもいいかもしれません。


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