「雨に負けぬ花」 Flowers Never Bend With The Rainfall
4小節がたった3音だけで作られ、コード進行だけが進む歌。とても印象深い歌です。
ポール・サイモン・ソングブックでもギターの弾き語りで収録されています。時はアルバム「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」の三年前。「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」版では十二弦ギターが加わり、ガーファンクルのハーモニーが歌をさらに盛り上げています。
十二弦ギターのコードストロークと、スリーフィンガーピッキングで爽やかな前奏に続いき、二人のユニゾンで始まるこの歌。歌の底に秘められたものの重さに、あらためてはっとさせられるのです。
Through the corridors of sleep
眠りの回廊を通り
Past the shadows dark and deep
暗く深い闇を過ぎて
My mind dances and leaps in confusion
僕の心は混乱の中で踊り跳ね回る
I don't know what is real
何が真実かわからない
I can't touch what I feel
心で感じるものに触れられない
And I hide behind the shield of my illusion
僕はただ幻想の中で、盾に隠れている
(以下全コーラスで繰り返し)
So I'll continue to continue to pretend
だから僕はただひたすら、自分にいいきかせる
My life will never end
僕の人生は決して終わることはないし
And flowers never bend with the rainfall
花だって雨に打たれても折れ曲がりはしない、、、と
花が折れ曲がらないことなど、本来ない。人間の人生が終わらぬことなどない。しかし、自分を偽り、幻想の中で心を閉ざしている主人公がこの歌にはあります。
僕の壁の鏡には
陰鬱でちっぽけな姿が映っている
それが僕であるかはわからない
神と真実、そして正義を映す光は
眩しくて見えない
だからあてもない道を、夜さまよう
鏡に映る自分は真実の自分だろうか?という問いかけは、日常における人間の苦悩を言い表しています。だから人は常に世をさまよい歩くのでしょうか。
No matter if you're born
人が生まれてきて
To play the King or pawn
演ずるのがキングでもポーンでも
For the line is thinly drawn 'tween joy and sorrow
喜びと悲しみの境界線は細く紙一重
So my fantasy
だから僕の空想は
Becomes reality
現実のものとなる
And I must be what I must be and face tomorrow
僕はなるべきものとなり、明日に立ち向かうしかない
pawnとは、チェスの中で最も価値の低い駒。将棋でいえば歩兵です。キングは、王将ですね。喜びと悲しみの境界線とは、盤の升目でしょう。自分は自分であるしかないその宿命を見つめ自分は自分であろう。来るべき明日から逃げることはしない。そんな心の中の決意を歌にポールは込めています。
「雨に負けぬ花」、英語のタイトルを忠実に訳せば、「雨にも折れぬ花」となります。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出しますね。でも、詩の内容からすれば、ぴったり一致します。
自分を偽る。でも、偽っているのではなく、自分を奮い立たせている、励ましている。明日を信じて。そうして人間は一生を生きるのではないでしょうか。
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