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「夢の中の世界」 The Dangling Conversation

 
 ポール・サイモンの美しい詩がとてもいい。ギターの前奏に続く、控えめなポールのソロに、アートがハーモニーを付け、伴奏にはストリングスが要所に加わる。一言で、ピュアーというか、洗練された歌です。
 
 でも、この歌の詩をよく読むと日本語題名と、歌の内容とのギャップの激しさに唖然とします。恥ずかしい話ですが、私はこの曲を30年以上前に聞き、今日今まで詩の内容を全く理解していなかったのでした、、、、。
 
 これは、夢の中つまり、二人だけの世界にいる恋人同士で、二人がそれぞれ本を読むという別の行動をしていても、愛が通じ合っている、ウツクシイ話なんだ、と信じていたのです。
 
 superficial sighsという言葉。発音を聞いてなんとなく、神秘的雰囲気が漂っていませんか!(私だけか?)※意味は、「無意味なため息」らしいです。
 
 ですからこの文を書く前まではそういう観点でウツクシイ歌だ、と書くつもりでした。でも全く違う展開になってしまいました。
 
 実際の内容は、
 この二人は心がすでに離れてしまった恋人同士で、その嘆きをけなげに美しく男が詩的に語っているそういう歌のようなのです。
 
 いったい誰が「夢の中の世界」なんて日本題名をつけたんでしょう!これって間違っているんでないかい(と故郷の北海道弁になります、意味はないけど)。
 
 It's a still life water color
 (水彩画のような静かな日々)
 Of a now late afternoon
 (遅い夕方になった、今)
 As the sunshine through the coutain lace
 (レースのカーテンから陽が透り)
 And shadows wash the room
 (影が部屋を洗い清める)
 
 歌の最初の部分を抜粋しましたが、私の陳腐な訳が全く必要がない位、美しい詩だと思います。T.S.エリオットという英国の詩人の影響を受け、サイモンが書いた詩ということですが、、、、。特に、Shadows wash the roomというフレーズはいい!
 
 ポールが、英国滞在時代に、キャシーという恋人がいて、彼女との触れあいで沢山の歌を書いたとされています。恐らくこの曲もそのひとつなのでしょうが、こんな悲しい歌があったなんて驚きました。
 
 でも私はまだ完全に信じているわけではありません。そんなはずはない、ウツクシイ愛を歌っているんだと、いう信念で英語の歌詞を何度も読み返してみたいと思います。無駄かもしれませんが。
 
 内容はともかく、神秘的な歌声が、私たちの疲弊した心を洗ってくれることは、間違いありません。
 
 この歌は歌作りだけでなく、録音にも時間をかけて完成したサイモン&ガーファンクルの自信作でした。特にポールの。シングルリリース第四作としても発表されました。しかし、最高第25位と売れ行きはかんばしくなく、きっと意気消沈したことでしょう。
 
 いい歌が必ずしもヒットに結びつくのではないという現実を、目の当たりにした一例でもあります。
 
 大切な人と一緒に、静かな部屋で、じっくり聞いてみてください。ぜひ。
 

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