「クラウディ」 Cloudy
100マイルのヒッチハイクというと、どれくらいの距離になるんでしょうか。
1マイル=160メートルですから、160,000メートル=160キロメートル。
「クラウディ」とはご存じの通り、曇り空のこと。もうすぐ梅雨の季節ですがあのどんよりとした空には、どうしても憂鬱にさせられますよね。そんな雲をモチーフとするこの歌ですが、とても爽やかで美しい歌声で歌っています。
ギターのはじける響き。澄んだベルの音。メトロノームの音のようなリズム楽器の前奏に続いて聞こえる文字通り澄んだハーモニー。
Lyric and music by Paul Simon
試訳・迷訳:musiker
Cloudy
曇り
the sky is grey and white and cloudy
空はグレー、白、そして曇り
Sometimes I think it's hanigin' down on me
時々僕を襲ってくるような
And it's a hitch-hike a hundred miles
100マイルのヒッチハイクに出かけているんだ
I'm a ragamuffin child
僕はぼろをまとった子供で
Pointed finger, painted smile
指さし、作り笑いで立っている
I left my shadow waitin' down
僕の影には、道で
the road for me a while
しばらく待たせてあるのさ
とっても覚えやすいメロディです。思わず口ずさみたくなります。
二人は(あるいはポールの声の多重録音?)ユニゾンで歌を続けます。とても息が合い、そして美しい。
sometimes〜のあたりの、まさに憂鬱さの歌声。hich-hike a hundred milesの軽快さ。歌にかぶるガーファンクルのバックコーラス。クリアな声に、うっとりさせられますね。
冒頭で、なんと雄大な例え、と書きました。けれども、これは憂鬱さの度合いの高さを表しているような気がします。それほどうんざりする長い距離のヒッチハイク。うんざりしているのは、ずっと晴れない空模様、そして自分の心なのでしょう。
「ぼろをまとった子供」という表現は、妙に微笑ましく感じます。10歳位の少年が、一所懸命、車が止まってくれるよう、指をたて微笑む光景が目に浮かびます。
第二コーラスは、心の中の曇り模様を表現します。
曇り
僕の考えは散り散りで曇り空
境目はなく、とめどもなく
こだまし、うねっている
次に突然トルストイというロシアの作家の名前とJ.M.バリー作「ピーターパン」に登場する妖精の名前、バークリー、カーメルという地名との対比で、とてつもない距離感=遠さ、長い時間を表します。
トルストイからティンカー・ベル
バークリーからカーメル
ポケットの中には、撮った写真
そして死ぬほど退屈な時間
第二コーラスに続く第三コーラス冒頭はこの歌のまさにクライマックス。
Hey, sunshine
ねえ、太陽君
I have'nt seen you in a long time
ずっとご無沙汰じゃないか
Why don't you show your face and bend my mind?
どうして顔を見せてくれない、なぜ心を晴れさせてくれないんだ
ベルの音、軽妙なギターに乗り、淡々としかも美しく進む歌、ユニゾンにバックコーラスという組み合わせで続いてきた歌は、ここでようやく二人のハーモニーとなります。いつもより単純なコーラスですけれど、絶妙な呼吸はさすがです。
再びリズミカルな歌声へと戻ります。
These clouds stick to the sky
雲は空に突き刺さり
Like a floating questions, why?
まるで宙ぶらりんの問いみたい、「なぜ?」って
And they linger there to die
きっと消えるまであそこに居座る気だろう
They don't know where they are going, and, my
雲だってこれからどこへ行くのかわからないんだ
freinds, neither do I
そうさ僕だって
それにしても、ガーファンクルの高音は美しい。サイモンの物憂げな歌いぶりも味がありますしね。
「クラウディ」は「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」の収録されただけの地味な歌で、ファン以外の耳には馴染みの薄い曲です。わずか二分と少しの短い歌。
「曇り」をモチーフとしているわりには、この爽やかで流々としたメロデとハーモニーを聞くだけで、心洗われる気がします。オススメです。
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