updated on 22 AUG 2006


ブラームス ヴィオラ・ソナタ第一番 ヘ短調 op.120の1
  Brahms(1833-1897) Sonata Fuer Viola und Klavier

事実上ブラームス最後の器楽曲となったこの作品は、独奏楽器をクラリネット、 あるいはヴィオラと銘打っている珍しい曲です。私はクラリネットも大好きな のですが、この作品に関してはヴィオラバージョンの方が好きです。先に聞い たからかもしれません。興味のある方は両方聞き比べてください。

マーラーは、老ブラームスの音楽を評し「交響曲よりも、室内楽曲において彼 の本領が発揮される」と生意気なコメントを残しています。ブラームスの交響 曲ファンは多く全世界で愛されているので、マーラーの評価をそのまま鵜呑み にはできないけれど、確かにブラームスの室内楽曲は交響曲に比べ世間の注目 度は低いような気がします。

彼の室内楽曲はいずれも規模が大きく、気楽に聞けない点が足かせになってい るのかもしれません。3月に私もそう書きましたね。

 「ブラームスの室内楽曲はドラマチックすぎ、そう頻繁に聞くのをためらう」
と。そう、聞いた後の満足感がの大きさと同じ位疲労感が伴う、つまりぐった り疲れるんですね。イージーリスニング的には聞けません。本を読みながら音 楽を聞くことってありますね?読書時のBGMにブラームス室内楽は止めるべ きでしょう。

ひとたびブラームスを再生してみなさいって。目の前にある本の文字は、次第 にかすみがかかり、やがてフェイドアウトしていきます。入れ替わりに八分音 符やら十六分音符やらが五線譜と共にフェイドインし、ぐるぐる回り出します (もちろん想像の中ででのお話です)。聞き入るまい、と決意していたのに、 意識は強制的に音楽へ。「じっと」聞いている自分が時々情けなくなります(笑)。 この「ヴィオラ・ソナタ」も強烈な効き目です。

第一楽章はピアノ両手によるドラマチックなオクターブのメインテーマがまず 提示され、それにヴィオラのむせび泣くようなメロディが続きます。この部分 だけで、相当気合いが入りますよ。しかもその後、艶のあるヴィオラのソロ。 ピアノはメロディを和音でリズムとで鳴らすこの時代特有の手法。ガーン、ガ ーンと頭に響く。要所要所で流れるヴィオラの音色。緩急自在なので、音楽的 充足感は満たされること保証するけれど、本当に疲れます。第一楽章だけで聞 くのを休憩するのも手かもしれません。でも、必ず第二楽章以後を聞いて下さ いね、二楽章以後を聞かないともったいないですから。第一楽章に標題をつけ てみました。それは「愛の修羅場」なーんちゃって。ピアノで冒頭に提示され たテーマは、最後ヴィオラが思い切りやるせなく、つぶやき、終わります。

第二楽章は「まどろみ」。第一楽章でこれでもかこれでもかと叩き続けたピア ノはサポート役に徹し控えめに鳴ります。ヴィオラの滑らかな響き。不思議な メロディで、夏の昼下がりにまどろむのもいい。まさにこの作品の聞きどころ です。

ブラームスはワルツをたくさん書いているけれど、「ブラームスのワルツでは 踊れない」って、誰かが揶揄していたのを思い出します。確かにシュトラウス のようなウィンナーワルツの軽さとは無縁であり、どこか重厚なので足取り重 くなってしまうのかもしれません。私は踊れませんが、踊りの得意な皆さんは いかがですか?第三楽章はワルツです。このメロディは、どこか中途半端な音 階でして、途中から始まっているような雰囲気があり、聞いている側は不思議 な気持になってきます。チェロにも似たヴィオラの音色は深いわいがあります。 中間部の一風変わった音楽も注目してください。

第四楽章、ファンファーレのようなピアノのせわしない前奏から始まり、快活 なヴィオラの調べ。メロディは第三楽章の変形ですね。ブラームスらしいフィ ナーレの見事な演出です。特にピアノの活躍がすごいです。ただ、聞くべし。 それだけしかコメントしようがありません。
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【私の聞いたCD】
お薦め度★★★★★

POCG-10029
収録曲
ヴィオラ・ソナタ第一番 ヘ短調 作品120の1
 Sonate fuer Viola und Klavier f-moll op.120 No.1
ヴィオラ・ソナタ第二番 変ホ長調 作品120の2
 Sonate fuer Viola und Klavier f-moll op.120 No.2
2つの歌 作品91〜アルト独唱、ヴィオラとピアノのための
 Zwei Gesaenge Op.91
 静められた憧れ(リュッケルト詩)Gestillte Schnsuch
 宗教的な子守歌(スペインの詩、ガイベルによる)Geistelisches Wiegenlied

イリス・ヴェルミヨン(アルト)2つの歌
ヴェロニカ・ハーゲン(ヴィオラ)
パウル・グルダ(ピアノ)

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※品切れ中のようですが、市場で入手可能であることを祈ります。

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