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ピアノ三重奏曲第三番

ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための三重奏曲 第三番 ハ短調 作品1−3

ハイドン先生が出版を止めるようにとアドバイスしたといわれる問題の「ピアノ三重奏曲」は、ベートーヴェンが取りあげる調のうちキーポイントとされるハ短調です。

ハイドン先生のおっしゃるとおり、この作品は3曲セット(Op.1-1〜3)の中ではいささか異色の存在です。はじめの二曲が底抜けに明るく楽しげなのに、これは何だ!え!といいたくなる曲。とくに第一楽章がそうです。

哀愁帯びたメロディはいいんですよ。でもその後の、単調なピアノの動きはないだろう?ってつっこみたくなる。ベートーヴェンお得意の楽器の音色が絡み合う妙技もないし、、、、、。

って思っていると、突然長調に変化します。ここからは本当に見事なメロディx展開。楽器の持ち味も活かしている。なら、あの冒頭は何?って思います。

私が考えるに、彼は冒頭のユニゾンの旋律で緊張感を表現したのではないでしょうか。そのまま緊張感を保つため、ピアノにあれほど単調な伴奏をさせた、そう思えてなりません。

その後は、いちおう常道で音楽の調子はいろいろなパターンの繰り返しになります。でも、聞いていて次第にのめりこんでいく聞き手の心の葛藤がつぶさに感じ取られる。不思議で、深い楽章ですな。

さて、第二楽章の主題のシンプル、というよりシンプルすぎるんですよ。ベートーヴェンさんが書くようなメロディではないんじゃない?ってクレームをつけたくなる。でもね、この主題の美しさには感動します。そしてベートーヴェンは単純な曲想をそのままにはしておきません。お得意の変奏です。第二楽章は変奏曲ですね。

って書くと前に「交響曲第三番」の第四楽章は変奏曲だと評論家が書いた記述に対し苦言を呈した自らの発言の二の舞ですが、、、でも、変奏曲の妙を楽しんでください。

第三楽章と第四楽章がありますが、私はこれ一緒の楽章のように聞こえます。調も同じですし、曲想も少しは違うけれど、つながっていてもおかしくはない。

一応第三楽章はピアノの問いかけに対し、弦楽器が応えるという形式にはなっていますが、ほとんど三者の会話です。観念的な和音展開もいいし、弦楽器の音色は美しい。中間部の弦楽器とピアノのかけ合いは美しく気持ちがいいです。

緊張感たっぷりの第四楽章は、三者の主役の奪い合いで続きます。と思っていると後半部は、三者が融合し見事なアンサンブルを奏でるんです。余韻を楽しむような最後の曲想がたまらなくいいです。中間部の大きなスケールの音楽展開に唖然としながら、またもや冒頭の曲想へと戻ります。

そして結局は緊張感を保ったまま音楽は終わるのです。

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