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「動物園にて」 At the Zoo


 人の老いというテーマを通じて人生を歌ったアルバム「旧友」のB面に収録された5曲は「パンキーのジレンマ」以外はすべてシングル発売された作品でした。曲名をあげると、、

  「フェイキン・イット」
  「パンキーのジレンマ」(アルバム収録のみ)
  「ミセス・ロビンソン」
  「冬の散歩道」
  「動物園にて」

 いやあ、個性的ですね。いかに彼らがヴァラエティに富んだ作品を発表してきたかがよくわかります。
 
 シングルのA面とB面の構成を調べてみました。
    A   /    B
 「冬の散歩道」/「エミリーエミリー」
 「動物園にて」/「59番街橋の歌」
 「フェイキン・イット」/「君の可愛い嘘」
 「ミセス・ロビンソン」/「旧友」/「ブックエンド」
 
 前作「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」からの作品がカップリングされています。「冬の散歩道」が1966年9月、「動物園にて」は1967年1月の録音。アルバムは1968年4月発売ですから、この二曲はあくまでもシングル用に作られた作品であったことが想像できます。

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 歌は前奏なしでいきなりポールの語りが始まります。
 
  Someone told me
  誰かが言っていた
  It's all happening at the zoo.
  動物園ではあらゆる出来事が起きる、と
  I do believe it.
  僕は信じている
  I do believe it's true.
  その通り、本当さ
 
 ハミングと力強いギターコードストローク、woo-woo-wooのハーモニー、そしてパーカッション、ピアノとベースが加わり楽しい雰囲気に。
 
  底抜けに明るくて楽しい道のり
  イースト・サイドから公園まで
  動物園への
  もう本当に気持ちのいい散歩さ
  もちろん、雨の日や寒い日には
  市内横断バスを使ってもいい
  行ってあげれば
  動物たちも喜ぶよ
  
 このフレーズには手拍子も加わり、本当に楽しそうに動物園に向かう様子が伝わってくるようです。にぎやかな循環調のメロディのここちよさ。そしてIf you doのあたりで、全く予想もしないコードに転換し、不思議な雰囲気を出しています。
 
 またポール一人の「動物園ではあらゆる出来事が、、、」という曲の頭と同じフレーズが現れます。今度は、ポール少し笑いながらI do belive it trueと歌っています。
 
  The monkeys stand for honesty,
  サルは正直ものの代表で
  Giraffes are insincere.
  キリンは偽善的
  And the elephants are kindly but
  ゾウは親切だけれど
  They're dumb.
  頭が悪い
  Orangutans are skeptical
  オランウータンは変化に対して懐疑的
  Of changes in their cages.
  檻の中ではね
  And the zookeeper is very fond of rum.
  動物園の飼育係はラム酒に目がなく
  Zebras are reactionaries.
  シマウマは反動的
  Antelopes are missionaries,
  カモシカは伝道師
  Pigeons plot in secrecy,
  ハトは陰謀を企て
  And hamsters turn on frequently.
  ハムスターはいつも陶酔状態
  What a gas ! You gotta come and see
  最高さ! 君も見に来ない?
  At the zoo
  動物園にさ
 
 出てくる動物のそれぞれの愛好者が聞いたら目を剥いて怒りそうな独断と偏見に満ちた批評。サルが正直というのはいかがなものか?キリンが偽善的?ハムスターはいつも走り回っているような気がするので、いつも「ハイ」になっているという見方もできそうですが、、。飼育係が酒浸りだとすれば、餌を与える時にも困りそうです。そういえば喜歌劇「こうもり」で出てくる看守も酔っぱらいだったけれど、、。まあ、ポールのユーモアが溢れた歌詞で、よくこれだけの動物にコメントをつけたものです。感心しますね。
 
 動物園の動物たちを引き合いに出していますが、もちろん、これは人間社会の事をいっているわけです。色々な人間がいて、本当に飽きないよ、と。 前にTVコマーシャルで、オリに入っている人間を、動物が見に来るのがありました。あんな感じでしょうか?
 
 最後はat the zoo というフレーズが繰り返されて、フェードアウトして終わります。本当に楽しげで、思わず手拍子に加わりたくなりませんか?録音でも、思わず「イェー」とかけ声がかかっています。
 
 そういえばB面の歌は「冬の散歩道」以外はすべてフェードアウトで終了していますね。当時の流行りでもあったのでしょうか。

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 ポール・サイモンは、「ブックエンド」のB面はサイモン&ガーファンクルの「ドライパッチのようだ」と述べているそうです。「パンキーのジレンマ」と「ミセス・ロビンソン」以外はそれまでリリースしたシングル曲で、結果的には埋め合わせをしたような構成でした(現代のJ-POPSのアルバムの多くはそうですよね)。こうなったのは元々ポール・サイモンの寡作のせいでもあったんですけれど、、、。
 
 それでも、A面の統一されたテーマ性、B面のヒット曲、そして何より名作揃いのこの「ブックエンド」というアルバムは、同時期にリリースされた映画「卒業」のサウンドトラックと共にヒットチャートを走り続けました。「ブックエンド」はヒットチャートで1位を連続7週間、合計66週間に渡りチャートに残り続けたのです。

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