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4月になれば彼女は April Come she Will

 なんて清々しい気持ちになる歌でしょう。
 初めて聞いたのははるか昔のはずなのに、今初めて聞いたような錯覚です。
 この文を書くため、今改めてヘッドフォンで聞いたところ、キーボードの動きがしばらく止まってしまいました、、、、。アートの澄み切った声、ポールの風のようにさわやかなギター、シンプルで繊細だけれど力強いメロディ、そして美しい詩。
 
 わずか1分50秒足らずの短いこの歌は、ポールの美しいギターのフィンガーピッキングで始まります。弦の高音部を生かし、リズミカルなフレーズのこの前奏が実に印象的で、前奏だけを何度も繰り返し聞きたくなります。
 
 ソロはアート・ガーファンクル。ポールとのハーモニーはなく、最後まで一人で歌います。澄み切ったその歌声、アートはやはり一級のヴォーカル。それをこの短い歌で見事に証明しています。
 
 詩は4月からの9月までの月名と対に短いフレーズが加えられています。
 
 (短い詩なので、全部掲載します)
 Copyright: 1965, 1993 Paul Simon Music(BMI)
 
 April come she will
 (4月になれば彼女はやってくる)
 When streams are ripe and swelled with rain
 (小川の水面が雨で満ちあふれる頃)
 May she will stay
 (5月にはここに住みつき)
 Resting in my arms agin
 (また僕の腕の中に眠る)
 
 ※第二行目、「小川の〜」の英語の音がとても美しい響きです。
 
 June she'll change her tune
 (6月、彼女は気が変わり)
 In restless walks she'll prowl the night
 (眠れず夜をさまよい歩く)
 July, she will fly
 (7月、彼女は飛んでいく)
 And give no warning to her flight
 (行くなんて一言も告げることなく)
 
 ※このコーラスでも、二行目の「prowl the night」の響きが印象的。不安げにさまよい歩く光景が、アートの声の微妙な変化で映画のように想像できます。
 
 August, die she must
 (8月、彼女は死ぬだろう)
 The autumn winds blow chilly and cold.
 (秋の風が吹いている、凍るように冷たい風が)
 September I'll remember
 (9月、僕は思い出す)
 A love once new has now grown old
 (あの時芽生えた恋も、今は枯れてしまった)
 
 ※「chilly and cold」は本当に冷たい感じに聞こえます。
 
 特に最後のコーラス「I'll remember」部分、アートの歌いぶりが光ります。彼女が飛んでいった、あるいは死んで天に昇る様子が、メロディとヴォーカルとで一体となり見事に表現されてるではありませんか。
 
 それにしても、こんなにすぐに死んでしまう恋人。はかない恋です。四月に現れて八月には消えてしまうとすれば、相手は人間ではなく、花、鳥などかもしれません。8月に凍るような風が吹く。まさに英国のどんよりとした雲や光景が目に浮かびますね。季節感が溢れています。
 
 この歌は、ポール・サイモンが子供向けに書いたものとも言われています。確かに、4月、5月、と続く感じは、数え歌を思わせます。
 
 ポールのソングライター、そしてギタリストとしての才能は言うに及ばず、アートのヴォーカルの素晴らしさが、ぎっしりと詰まっているこの歌。しみじみと、ご堪能下さい。

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