わずか1ヶ月で制作されたアルバム「サウンズ・オブ・サイレンス」
ポールとガーファンクルが、冬を思わせる寒そうな道を歩き、こちらを振り向くカットがジャケットに使用されている彼ら2作目のアルバム「サウンズ・オブ・サイレンス」は、1965年12月に発売されました。
その年の9月に、エレクトリック系楽器でフォークロック調に加工された「サウンド・オブ・サイレンス」がヒットした直後わずか3ヶ月目でのアルバム発売。ヒットシンガーが出れば使えるだけ徹底的に使い儲けを得るという、当時米国の音楽ビジネスの定石通り、CBSは、このデュオに緊急で新作アルバムを命じました。
アルバムの制作期間はわずか3週間といいますから驚きです。
ポールも後になって「わずか1ヶ月でアルバムを制作しなけりゃなかったんだ」とこぼしていたそうですから、彼らのやるせない気持ちが、わかります。
収録曲
1. *The Sound Of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)
2. *Leaves That Are Green(木の葉は緑)
3. Blessed(ブレスト)
4. *Kathy's Song(ケイシーの歌)
5. Somewhere They Can't Find Me(どこにもいないよ)
6. Anji(アンジー) ※ギターーソロ
7. *Richard Cory(リチャード・コリー)
8. *A Most Peculiar Man(とても変わった人)
9. *April Come She Will(四月に彼女は)
10. We've Got A Groovy Thing Goin'(はりきっていこう)
11. *I Am A Rock(アイ・アム・ア・ロック)
曲名を見ると、ポールが1965年5月に録音した「ポール・サイモン・ソングブック」というソロアルバムの中の曲が7曲(*印)入っています。新曲はそれ以外の4曲のみ。ですから、これはサイモン&ガーファンクルのアルバムであっても、実質的にはポールのアルバム。それにアートがハーモニーとして加わり、今改めて聞くと全く音楽的に意味が感じられないエレキ楽器のアレンジ(これが当時の流行りでもあったけれど)が加えられた、いわば、つぎはぎだらけのアルバムだったといえるでしょう。
もっとも、「ポール・サイモン・ソングブック」は、その後ポール自身が廃盤としてしまいましたから、実体はどうあれ、このアルバムは、彼の初期の秀作の宝庫でもあります。歌の素晴らしさは言うまでもありません。曲もさまざまな色で飽きさせません。
なによりも、中断し消え去ってしまう可能性のあったサイモン&ガーファンクルの活動が本格的に始められた記念すべきアルバムでもあり、私たちファンには他のアルバムと同様の宝物です。
なお、アルバム名記載で「サウンド」ではなく「サウンズ」としてあるのは間違いではありません。アルバム名は Sounds of Silence となっています。それと、余談ですが、ポール・サイモンは、The Sound of Silence の曲名を、自身がソロでうたうときは、Sound(単数形)、ガーファンクルと歌う時はSounds(複数形)と分けているそうです。でも、レコード会社もこの区別については混乱しているようで、まちまちの記載となっています。手元にあるCD版「サウンズ・オブ・サイレンス」ではこの歌のタイトルは単数形に、アナログLP版の「水曜日の朝午前三時」では複数形になっています。まあ、私たちにはどちらでもよいことですが、ポール一流のこだわりなのでしょう。
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