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     ★ All Simon and Garfunkel−−−−−Vol.43★       
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【43-45=−2】号

CONTENTS
 1.「教会は燃えている」 A Church is Burning
 2.3枚組CD「旧友」収録の未発表曲など
 3.新メールマガジン
    「songs, paul simon ソングズ・ポール・サイモン(仮称)」
   創刊のお知らせ

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 1.「教会は燃えている」 A Church is Burning

 「ライヴ・フロム・ニューヨークシティ」に収録されている曲にはS&Gの
 曲としてオフィシャルに発表されていない「教会は燃えている」があります。
 同じ録音は三枚組の「旧友」にも入っています。

 この作品はもともと「ポール・サイモン・ソングブック」の3曲目に入って
 いました。ポールが自ら「初めて書いたシリアスな曲」と言及している「私
 の兄弟」と同様の「怒りが」こめられています(怒りとは、1960年代前半
 に米国で活動したクー・クラックス・クランという人種差別グループによる
 恥ずべき行為に対するもの)。
 
 歌のメイン部分の詩。静かですが、その「怒り」が充分に伝わります。
 
  A Chruch is burning
  教会が燃えている
  The flames rise higher
  炎は高く上がる
  Like hands that are praying
  まるで祈る手のように
  Aglow in the sky
  空に燃え上がる
  Like hands that are praying
  祈りを込めた手のように
  The fire is saying
  だが、炎はこう言う
  You can burn down my churches
  「私の教会を燃やせても
  But I shall be free
  私は自由なのだ」と
  
 このメイン部分は4度もリピートされます。ポールがいかに強いメッセージ
 を送りたいと考えていたかがよくわかります。
 間では、教会が焼き払われる前の人々の暖かい集い、犯人たちの行動の情景
 などが淡々と歌われます。淡々としているだけにより強烈。
 
 心のより所である教会は信者たちにとっては単なる建物以上の存在です。そ
 れを焼き払うという忌まわしい行動は実に挑発的で、多くの人々を悲しませ
 たことでしょう。しかしポールはたとえ教会という建物がなくなっても、人
 の心を焼き払うことはできない。燃え上がる炎に「自由」の心を重ね合わせ
 て歌います。
 
 この歌は英国のラジオ放送で紹介されました。ジュディス・ピープという凄
 腕の女性がポールの歌に感銘し、精力的に彼を紹介しようと駆け回りました。
 そしてある宗教番組で彼の歌を12曲放送するという交渉に成功します。番組
 は、聖職者が今日の教えを主婦や労働者に説くものでした。そういう番組で
 「教会は燃えている」という題名は相当刺激的だったでしょう。歌をよく聞
 けば決して番組に違和感あるものではなくむしろふさわしい。けれども、こ
 のような刺激に慣れていない人々の受け止め方はどうだったか興味がありま
 すね。事実放送後は投書が殺到したそうです。この番組の反応を実績となり
 「ポール・サイモン・ソングブック」の収録と発売が決定したようです。
 1965年5月のことでした。
 ※この項については『ポール・サイモン』(パトリック・ハンフリーズ著
  野間けい子訳 音楽之友社刊)を参考にしています。
 
 ポールのソロ色の極めて強い「教会は燃えている」は、S&Gの公式アルバ
 ムには収録されておらず、デモ版なども公表されていません。唯一ライブ版
 で二人のデュオが聞けるのです。二人の歌いぶりからは、サイモン&ガーフ
 ァンクルはこの歌を相当気に入り定番のレパートリーとしていたのではない
 かと想像します。
 
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 2.3枚組CD「旧友」収録の未発表曲など
 
 数年前に限定版として発売された3枚組CD「旧友」には、S&Gのほとん
 どの作品が収録されています。限定版でしたので一時入手不可能になってい
 ましが、再びこの5月に同じものが発売となりました。読者の皆さんの中に
 も買い求めた方がおられるかもしれませんね。
 
 このCDは3枚組で、時代を追いながら彼らのの作品のほとんどが収録され
 ています。収録されていないのはごく数曲で、
 ★水曜日の朝、午前三時
  「ユー・キャン・テル・ザ・ワールド」「山の上で告げよ」「昨日見た夢」
  「時代は変わる」
 ★パセリ・セージ・ローズマリー&タイム
  「プレジャー・マシン」「簡単で散漫な演説」
 ★ブックエンド
  「ブックエンド(インストゥルメント)」「老人の会話」
 のみ。
 
 公式版ではなくライブ版で入っているのは、
 「地下鉄の壁の詩」「ブレスド」「オーヴァーズ」「とても変わった人」
 「バイ・バイ・ラブ」
 ライブ版には今日紹介の「教会は燃えている」に加え
  「レッド・ラバー・ボール」
   これもコンサートのみでしか聞けない歌のひとつ。他のアーチスト向け
   に書いた作品のようですが、結局は陽の目を見ず、S&Gも録音してい
   ません。
   Red Rubber Ball とは赤い風船のこと(日本にもそんなグループがい
   ましたね)。恋の歌ですが、太陽が昇れば自分は再び立ち上がれると
   いう米国版「夜明けの歌」というと怒られそう?
 「ヘイ・スクール・ガール/ブラック・スラックス」
 「ザット・シルバー・ダディ・オブ・マイン」
   トム&ジェリーの最初のヒット曲を含む、彼らの原点。サイモン&ガー
   ファンクルの雰囲気とは全く違っていますね。これらの歌を受け入れら
   れるか、否かで、あなたのS&G中毒度が決まります。
 
 マニアは既に全アルバムを持っている。けれどこれらのレア録音を求めて
 つい買ってしまう。レコード会社も商売がうまいな。小出しにしきれない
 から「ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ」を出したのか、と勘ぐりたく
 なるのは私だけでしょうか。

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 3.新メールマガジン
    「songs, paul simon ソングズ・ポール・サイモン(仮称)」
   創刊のお知らせ
   
 all simon and garfunkel終了後、どうするかいろいろ考えましたが、新し
 いメールマガジンを創刊することに決めました。
 題名はまだ仮称ですけれど
 『songs, paul simon ソングズ・ポール・サイモン』
 です。
 ソングライターとしてのポール・サイモンの歌を、ソロ活動を主体として
 取りあげ私なりのコメントを書きたいと思います。もちろん、ポールの作品
 となれば、サイモン&ガーファンクルは欠かせないので、S&Gについても
 時々言及するでしょう。
 ポールだけでなくアートのソロ活動も取りあげることを考えましたけれど、
 守備範囲を広げると質が下がるので、このメルマガではポールに焦点をおき
 ます。といっても、ポールの活動にアート・ガーファンクルを抜きに語るこ
 とは不可能ですから、時々登場しますよ、もちろん。
 
 ポール・サイモンのソロ活動については、正直に告白しますが、このメルマ
 ガを始めるまでは長い空白期間があります。私の中で、ポール・サイモンの
 ソロ活動は「時の流れに」で止まっていました。ですから、わずか一年足ら
 ずの一夜漬け状態でポール・サイモンのメルマガを始めるのです。ディープ
 なファンからは暴挙と評されるでしょうね。
 
 でも、私はall simon and garfunkel同様、ポールのソロ活動後の歌をあま
 り聞いたことのない方に向かって語るつもりです。深く知らないことは別に
 障害にはならないでしょう。彼の歌の魅力を率直に、何の予備知識もなく、
 語りたいと思います。ディープなファンには興味のない内容になるかもしれ
 ませんね。
 
 ポールはS&G以後、成長しました。歳を重ねたのだから当然でしょうけど、
 世の中に自分の昔の偶像から抜けられず万年青年を演じているアーチストが
 どれだけ多いことか。しかしポールの歌には、30代、40代、50代、そして
 60代それぞれの年齢でしか訴えられないものがあります。聞き手と一緒に、
 歳を重ねるアーチストの歌を追うという、楽しい経験がこのメールマガジン
 で味わえる。それを読者の皆様と再び共有したいと思っています。
 
 ぜひ引き続き購読下さい。
 第一号配信は11月3日(日)予定です。
 まだまぐまぐに申請中なので申込はできませんが、今週半ばには申込可能に
 なるでしょう。どうぞよろしく。
 ※申請用のサンプルは
 http://www.musiker21.com
 に載せています。
 
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 あとがき
 
 読者の皆さんの中には「all simon and garfunkelを続けてポールの歌を
 語ればよいのでは?」と思っていらっしゃる皆さんもおられるでしょう。
 
 私も実は迷いました。
 
 でも、私にとってサイモン&ガーファンクルはサイモン&ガーファンクル。
 ポール・サイモンはポール・サイモン。
 同列には考えられない、それほど偉大な二大アーチストなのです。
 このメルマガを購読下さっている皆様の中にも同じ思いの方はおられるでし
 ょう。だから別のマガジンであるべきです。
 
 ということで新規一転新しいメールマガジンにすることにしました。

 新メルマガに興味のある方には大変お手数ですけれど、新たに購読お申し込
 みをお願いいたします。
 
 では、Vol-44まで、ごきげんよう!