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┃     ★ All Simon and Garfunkel−−−−−Vol.24★        ┃
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 「明日に架ける橋」 Bridge Over Troubled Water(1)
                「明日に架ける橋」第一曲 収録
 
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 When you're weary, feeling small
 君が疲れて、しょげているなら
 When tears are in your eyes, I will dry them all
 瞳に涙があふれているなら、僕がすべてふいてあげる
 I'm on your side, when times get rough
 君のそばにいるんだ、辛い時だって
 And friends just can't be found.
 友達が近くにいなくても
 Like a bridge over troubled water
 荒れた海にかかる橋のように
 I will lay me down
 僕が体を横たえるから
 
 When you're down and out
 君がうちのめされ
 When you're on the street
 道で立ちすくんでいて
 When evening falls so hard
 ひどい夕暮れになったら
 I will comfort you
 慰めてあげるよ
 I'll take your part
 君の代わりになる
 when darkness comes
 暗闇が襲い
 And pain is all around
 痛みでたまらないなら
 Like a bridge over troubled water
 荒れた海にかかる橋のように
 I will lay me down
 僕が体を横たえるから
 
 (Copyright: Paul Simon)
 迷訳:musiker ※以下同じ

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 ◆熱烈なラブソング
 
 あなたは、他人に対し、こんな気持ちになれるでしょうか。
 こんな気持ちになれる大切な人がいるでしょうか?
 
 熱烈なラブソングです。これから恋愛を経験する人、かつて燃えるような恋を
 経験した人、いずれもその時のピュアな感情を想像、または思い出してみまし
 ょう。
 
 きっとそんな気持ちが多くの人の共感を呼び、この歌は全世界の人々の支持さ
 れたのだと思います。
 
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 ◆ラブソングを超えた博愛の歌
 
 サイモン&ガーファンクルの名実共に最高傑作とされる「明日に架ける橋」は、
 1970年に発表され、以来32年間、不屈の名作として未だに人々の心に生きてい
 ます。
 
 大いなる愛の歌? でも、恋愛という枠を超えた、大きな意味での愛を歌う歌
 と解釈しても間違いではありません。言い換えると「博愛」、つまり人間すべ
 に対する愛の歌とでも申しましょうか。
 
 決してラブソングを小さく見なすつもりがあるのではありませんし、ポール・
 サイモン自身もそんなに大げさには考えていなかったかもしれないけれど、こ
 の歌の根底に、スケールの大きな人間愛を感じさせます。極端にいえば宗教が
 かったような。
 
 そうでもなければ、なぜ全世界の人々にこれほど愛されたのでしょうか。その
 理由は見つかりません。
 
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 ◆「明日に架ける橋」はサイモン&ガーファンクルの歌ではない?!
 
 私は、この歌をサイモン&ガーファンクルの歌として私は考えていません。
 確かに作者はポール・サイモン、歌はアート・ガーファンクルがソロであるも
 のの、第三コーラスではポールとのハーモニーが少しだけ聞こえます。
 
 しかし、それまでの作品で必ず登場したポールのギターは全く聞こえません。
 ハーモニーも実に単純な重唱だけにとどまり、あの繊細なコンビネーションは
 感じられません。
 
 まさにアート・ガーファンクルの独壇場なのです。
 
 アートの歌が光っている事は、誰もが認めるでしょう。この歌はアート以外の
 誰が歌ってもフィットしない。その声と歌が見事に調和しています。
 
 特に、第三コーラス最後、
 I will lay me down
 の部分の長いフレーズ。あの感動は今聞いても、何度聞いても、身震いしてき
 ます。
 
 申し訳ないけれど、ポールの出番は必要ない、そんな曲に結果的になってしま
 った。S&Gの歌ではない、と考えるのは、こんな理由からです。
 
 でも、、、、
 やっぱりこの歌は、ポール・サイモンと、アート・ガーファンクルでなければ
 出来得なかった歌なんですね。役割がどうあろうと、それまでの歌と違おうと
 も、やはり。

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 ◆アルバム「明日に架ける橋」そのものが本来のS&Gのアルバムではない
 
 「明日に架ける橋」という歌だけではありません。アルバム「明日に架ける橋」
 そのものがサイモン&ガーファンクルのアルバムではないのです。二人は相当
 このアルバムへ思い入れがありましたが、ガーファンクルは、映画の撮影など
 もあり、ポールとすれ違いになりました。ポール自身はアートとのパートナー
 シップを望み、待ちこがれて、色々努力をしていたようですが、アート自身の
 映画への集中力とアルバム制作への集中力の分散が不満で、ぎくしゃくした関
 係になっていたとも伝えられています。事実「明日に架ける橋」に収録されて
 いる作品のうちいくつかは、ポールだけのヴォーカルで、コーラスは重ね録音
 です。
 アルバムを注意して聞いてみましょう。
 二人の絶妙なハーモニーが感じられる歌は皆無なことに驚きます(唯一ライブ
 版「バイバイラブ」だけは、二人のデュエットですが、、)。一曲中に別々に
 ソロが出てくる歌はあります。しかし、ハーモニーはない。
 ポールが曲を示し、アートによるハーモニーの提案で築き上げられた伝説的な
 ハーモニーはこのアルバムでは聞けないのです。
 
 前に、アルバム「明日に架ける橋」はそれまでのサイモン&ガーファンクルの
 音楽とは違う、と書きました。その第一の理由がここにあります。
 
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 ◆もうひとつの立て役者はピアノのアレンジ
 
 「明日に架ける橋」の魅力はゴスペル調にあるとされ、ピアノだけによる伴奏が
 採用されました。アレンジャーのジミー・ハスケルが、ポールのオリジナルの
 調Gメジャーからアート用にEbにアレンジし、ピアノ伴奏はラリー・ネクテルが
 担当しました。完成までに4日もかかり、ポールを苛立たせましたが、完成した
 演奏を聞いたとたん、そのシンプルでスケールの大きいサウンドに身震いした、
 と書籍(『旧友』音楽の友社刊、絶版)にあります。
 
 事実、このピアノがなければ、「明日に架ける橋」の魅力は半減したでしょう。
 いや、ひょっとするとこんなに大ヒット曲になったかも疑わしい。
 
 この歌に収録されているピアノの素晴らしさは誰も疑いようがありません。後で
 ライブ版による演奏でピアノを聞くこともできるけれど、オリジナルと比べると
 雲泥の差です。

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 ◆スタジオで書かれた第三コーラスの詩
 
 この素晴らしい伴奏が伴ったにもかかわらず、アート・ガーファンクルとロイ・
 ハリーはまだ物足りなさを感じていました。オリジナルの第二コーラスまでの
 詩に、第三コーラスをつける提案をします。
 
 アルバム「明日に架ける橋」では、ポールは、作者として、自己主張をするよう
 になり、アートともかなりぶつかったようです。それがぎくしゃくした関係にも
 発展し、アートの俳優としてのアイデンティティ追求と重なって、二人のパート
 ナーシップは崩れかけていました。
 
 でも、この時、ポールは昔のように共同作業者としての役割に徹し、ピアノを
 聞きながら詩を書きました。
 
 Sail on Silver girl, sail on by
 銀の少女よ、出航するんだ
 Your time has come to shine
 ついに君が輝く時が来た
 All your dreams on their way
 夢がすべて実現するんだ
 See how they shine
 その輝きを見てご覧
 If you need a friend
 もし友達が必要になったら
 I'll sailing right behind
 僕が後ろから船を漕いでついていこう
 Like a bridge over troubled water
 荒れた海にかかる橋のように
 I will ease your mind
 君の心に安らぎを与えよう
 
 
 実に感動的な詩。恋人、あるいは友への最高の思いを歌う詩に、誰もが感動し
 ました。ポール自身は、第二コーラスまでの詩に比べ、付け足しの感が否めな
 いのではと心配していたものの、関係者一同、その素晴らしさに感銘し、ポール
 に最高の敬意を表したというのです。
 
 第三コーラスのモチーフは、実は、ポールが当時結婚していたペギーの髪の毛
 に白髪が二、三本交じっていたこと(銀色の少女=白髪頭の女性)だったと聞
 くと、驚きますが、詩そのものから得られる感動は変わらず、むしろ微笑まし
 いですね。
 
 完璧な歌、完璧なピアノ伴奏、アートの完璧なヴォーカル。そこに更に壮大な
 アレンジを加えることで、「明日に架ける橋」は完成してきいます。
 (to be continued)
 
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 あとがき
 
 ついに「明日に架ける橋」を書いてしまいました。実はこの歌はメルマガの
 最後の号で書くつもりだったのです。全曲の紹介が終わり、結びとして。
 なぜなら「明日に架ける橋」はサイモン&ガーファンクルの終わりを告げる曲
 でもあります。この歌が決定的な原因となり、二人はデュオを解消したと考え
 てもいいから。
 
 でも、、。
 世界中の人々、サイモン&ガーファンクルのファンである、ファンでないにか
 かわらず、この歌が人間に伝えた普遍的なメッセージはとてつもなく大きい。
 書くことはたくさんある。それに、なぜか世の中から、生きるものへの愛情、
 思いやりの心が失われてきているような出来事がこの頃多すぎる。偉そうな
 ことは言えないけれど、私自身だって。
 
 だからこそ今、この歌について書きたい、いや書くべきだと思いました。
 書くことはまだまだ沢山ありますので、いずれまた「明日に架ける橋」について
 は語ります。
 
 では、次号で!